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報告義務条項とは?

人が社会生活や経済活動を行う際に、様々な契約を結びます。契約によっては、相手方に報告を求める条項(報告義務条項)を記載する場合があります。

本記事では、「報告義務条項」とは何か、注意すべきポイントなどをご説明します。

報告義務条項とは何か?

ある業務を他人に任せる契約を「委任契約」と言います。例えば、AさんがBさんに対して、法律行為Cを自分の代わりに行ってもらうことを頼み、Bさんがそれを承諾するような契約です。

委任契約では、Bさん(受任者:法律行為を委託された人)はAさん(委任者:法律行為を委託した人)に報告する義務があります。

この報告義務について、民法第645条で「受任者は、委任者の請求があるときは、いつでも委任事務の処理の状況を報告し、委任が終了した後は、遅滞なくその経過及び結果を報告しなければならない。」と規定されています。

先程の例で言えば、AさんはBさんに進捗状況をいつでも問い合わせることができます。また、BさんはAさんから問い合わせがあれば、進捗状況を報告し、Cが終了した後は、直ぐに経過や結果をAさんに報告しなければなりません。

従って、委任契約を締結した時点で、AさんはBさんにCの進捗状況を確認できる「権利」があり、BさんはAさんに報告する「義務」が生じるのです。

同様のことは、法律行為ではなく、事実行為を委託する準委任契約についても該当します。一般的な業務委託契約なども、準委任契約に分類されるものが多いです。

報告義務条項を契約書に明記すべきか?

(準)委任契約では、契約書にあえて「報告義務条項」を明記しなくても、民法の規定によって、Aさんは進捗状況を確認できる権利、Bさんは報告しなければならない義務が発生します。

しかし、委任契約書を作成する際には、一般的に「報告義務条項」を明記すべきです。それは、契約当事者の権利・義務を明確にすることが重要だからです。また、契約書に明記していなかった場合、報告義務の存在について、後々AさんとBさんの間でトラブルが発生することも考えられるからです。

報告義務条項の記載例

(準)委任契約書に「報告義務条項」を記載する場合、例えば以下のような文言になります。

第〇条(報告義務)
1 乙は、甲に対して、甲所定のフォーマットに従い、業務従事者及び業務時間等を記入した上で、営業日終了後毎日/毎週1回、甲宛に電子メールにて、送信しなければならない。
2 乙は、本件の業務の履行の状況に関して、甲から求められた場合は、その状況につき、直ちに報告しなければならない。

報告義務条項の機能とは?

上記の記載例のうち、第1項を契約書に記載することで、甲(委託者)は乙(受託者)の日々の業務内容を把握できます。甲は、その都度乙に問い合わせる必要はありません。

また、第2項を記載することで、甲は業務の進捗状況を随時確認できます。1項の報告を確認する中で、懸念事項があれば、2項を根拠に追加の報告を求めやすくなります。また、乙の業務を抜き打ち的に確認することもでき、後々の大きなトラブルを回避することができます。

報告義務条項がない場合のリスクとは?

もしこの報告義務条項を明記しなければ、どのようなリスクが生じるでしょうか。

まず1つは、委託者が業務の進捗状況を確認できず、その結果として委託者の利益を図ることが難しくなります。但し、進捗状況を確認するためには、委託者は、適切な報告を受けられる体制を整えておかなければなりません。例えば、報告用のフォーマットなどを準備することなどが必要です。

2つ目は、報告が受けやすい状態になることで、将来発生し得る問題を防止するきっかけを失ってしまうことです。受託者が委託者に適宜報告を行う環境があれば、その過程で今後生じ得る問題に気づくきっかけが得られる可能性が高まり、結果として、問題を未然に防げる可能性も高まるでしょう。

3つ目は受託者にとっての不利益です。受託者が適性に業務遂行を行っていたにも関わらず、適時の報告が行われていなかったことによって、委託者・受託者間で責任の所在が検証しにくくなってしまう可能性があります。定期的に受託者が委託者に対して報告することで、業務に関する情報を受託者・委託者双方が共有できます。それにより、不測の事態が発生した場合の原因検証が行いやすくなるはずです。

そして、適切な報告がされていた場合には、当該報告から事実関係について一定の推測が行われることにより、業務が遂行できなかった場合の責任の所在について、(受託者に責任がないことについて)明確になる可能性が上がると考えられます。


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報告義務条項の注意点

(準)委託契約には報告義務がありますが、請負契約にはありません。

請負契約とは、依頼者が相手方(受注者)に仕事を依頼し、受注者が「その仕事の完了」に対して責任を負う契約です。一方、(準)委任契約は、法律(事実)行為を自分の代わりに相手方に行ってもらう契約です。

例えば、DさんがE工務店に家の建築を依頼する契約が請負契約です。途中経過は関係なく、あくまでも家が完成することが契約の目的です。この請負契約では、依頼者が受注者に対して適宜報告を求める必要はなく、法律の定めに従えば、「報告義務条項」は不要ということになります。

従って、請負契約書に報告義務条項を記載しなかった場合、委託者は受託者に対して、法的に報告を求める権利がないことになります。

しかし、請負契約といえど前記報告義務がない場合のリスクは存在します。そのため、一般的には請負契約でも報告義務は記載するのがベターですし、契約書で明記されることが一般的です。

契約時にチェックすべき点とは?

契約は、当事者の合意によって成立します。通常、契約する場合には、一方が契約書の原案を相手方に提示し、当事者双方で協議を行います。そして、双方が納得した内容を最終的に契約書に記載し、双方が署名捺印することで契約が成立するという流れです。

契約当事者が報告義務条項について協議を行う際には、委任者、受任者それぞれに注意点があります。

委任者の場合、自分が委託した業務の進捗状況が、最も気になる点ですから、受託者に自分が知りたい事項に関する報告義務を課す条文を記載したいところです。

もちろん、委任契約に報告義務があることは民法に規定されていますから、契約書に明記されていなくても、受託者には報告義務があります。しかし、契約書に明記することで、受託者に対して自覚を促すことができます。

いくら受任者が責任感のある人でも、委託者からのチェックがなければ、ついつい業務に手を抜く可能性があります。ですから、定期的な報告と合わせて、委任者からの請求があった際の報告についても、記載するようにしましょう。

一方、受託者の立場からすれば、日々の報告をかなり負担に感じるはずです。そこで、「乙は、甲に対して一切の報告義務を負わない」という文言を契約書に記載することで、報告義務から免れることができます。但し、これは委託者がその内容でよいと言ってくれる場合だけです。

通常こうした文言は受け入れられないため、代替案として、報告の頻度が必要最低限となる文言に変更する方法があります。例えば、契約書の原案に「営業日終了後毎日、甲宛に電子メールにて、送信しなければならない」とある場合には、「毎週の最終営業日に…」という文言に変更してもらうように、受託者から委託者に申し入れを行って、委任者が承諾すれば、週1回の報告で済むことになります。

まとめ

委任契約・準委任契約には、民法で報告義務が規定されています。しかし、受託者に責任を持って業務を行ってもらうため、将来の問題を未然に防ぐためにも、契約書に明記しておく必要があります。また、受託者は、報告の頻度などで負担を感じる場合、負担が軽減できるような条項にしてもらうように、協議することを心がけるとよいでしょう。

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