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日清食品HDの本間さんに伺う、法務担当者の「日々のあり方・振る舞い方」(中編)

GVA TECHでは、テクノロジーで契約業務に関する課題解決を目指すだけでなく、企業の法務パーソンの方々のお役に立てる情報発信を行っています。その一貫として、企業法務に携わる方々向けのセミナーも随時開催しています。

今回は、法務担当者が日々、どのように業務に当たればよいのかをテーマに、日清食品HDのジェネラル・カウンセル、本間正浩さんを講師にお迎えしてお届けしました。

・法務パーソンの定義
・法務部門に期待されていること
・法務パーソンが結果を出すためには
・具体的な日々の過ごし方

などを、具体的に解説します。

法務に携わって30年。日本を代表するジェネラル・カウンセルのひとりとして、世界各国の法務パーソンと交流をされる本間さんの視点と具体的な考え方は、多くの法務パーソンの皆さんの参考になるでしょう。

前編から読む


本間 正浩
日清食品ホールディングス株式会社
CLO・執行役員、ジェネラル・カウンセル

1989年弁護士登録。10年のプライベート・プラクティスの後、1999年、GEエジソン生命保険(株)執行役員・ゼネラル・カウンセルとなり、企業内法務に転身。その後、デル(チーフ・リーガル・カウンセル)、GEコンシューマーファイナンス(チーフ・リーガル・オフィサー)、新生銀行(法務部長)等を経て2013年より現職。
日弁連弁護士業務改革委員会・企業内弁護士小委員会座長。Executive Committee member, ACC Asia GC100、日本組織内弁護士協会海外事情研究会座長


「法律に違反する恐れがあります」なんて言葉は聞きたくない

法務部門の機能を表す言葉に「パートナー」「ガーディアン」があります。

パートナー:ビジネスと一体のチームメンバーとして、企業の積極的な発展に貢献する

ガーディアン:企業に法令等を遵守させ、リスクを回避し企業を守る

利益を最大限にするためにやれるだけのことはやろうというパートナーと、企業活動を倫理の枠組みの中に取り込もうとするガーディアン、双方の関係性には一定の緊張関係、相反する関係性にあることは容易に想像が着きます。

しかし、本間さんは「企業に結果を出させることが法務パーソンの仕事の本質だとするならば、パートナー機能とガーディアン機能は決して対立する関係ではない」と語ります。

パートナーについて

本間さんは「強力なガーディアンであるということはパートナーたりうる前提になる」と言います。

利益追求のあまり違法行為に走った挙げ句に制裁を受けてしまった。これでは決して企業を発展させたとは言えません。むしろ、ビジネス目的を達成するために、ギリギリを狙えば狙うほど、一線を踏み越えないために的確な判断とコントロールが求められます。

会社をきちんとコントロールすることが結果につながるわけで、強力なガーディアンであることが、パートナーであることの前提であるという先ほどの言葉に繋がります。


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ガーディアンについて

法務パーソンの目的は「結果を出すこと」です。つまり、正しいことを言いましたということだけでは意味がありません。

「信頼された法務パーソンでなければ、『これはやるべきではない』という意見を会社は聞いてくれません。つまり、実効性のあるガーディアンであるためには、信頼されるパートナーになり、彼は我々のビジネスサイドの仲間なんだ、我々のために一所懸命考えてくれるんだと思ってもらえなければ、話を聞いてもらえないんです。自分の言葉で会社が動かないのなら、法務パーソンは『単に正しいことを言いました』というだけの存在になってしまいます。これでは決してガーディアンとは言えません」


これらを前提に、法務パーソンの具体的な仕事のフェーズに基づいた仕事の内容、やり方を考えてみましょう。

法務パーソンが外部の弁護士と違う最大のポイントは、企業の中にいて、その企業のためにフルタイムで働いているという点です。そして、パートナーであれガーディアンであれ、結果を出さなければなりません。企業に正しいことをさせないといけないし、正しい方法で企業を発展させないといけないわけです。

となると、「社内の法的な問題・課題を発見することが法務パーソンの責務になる」と本間さんは語ります。

「これは法務パーソンの『責務』ですので、知らなかったとか、聞かされていなかったというのでは、我々は仕事をしたことにはならないんです。知らなかった、聞かされていなかったというのは、私は法務パーソンとして責任を果たしていません、あるいは法務パーソンとして無能でしたということでしかないわけです」

そのきっかけ、情報のソースはたくさんあると本間さんは言います。

たとえば、「契約書を見てください」と持ってこられた際、それは仕事のきっかけでしかないというのが本間さんの考え方です。

「我々がやろうとしているのは契約のレビューではありません。ましてや契約「書」のレビューでもありません。それは『仕事』ではなく、『仕事のやり方』の一つでしかありません。その契約書をきっかけに、なにを見るか、なにを見にいかなければならないかを考えるのが法務パーソンですと部下にはよく言っています」

社内での雑談も非常に重要だとも語ります。

昨今のコロナ禍でテレワークが普及し、なかなか直接対面して雑談することは難しい環境下ではありますが、食事に行ったり飲みに行って雑談をするなかで、他部署でどのような動きがあるのかヒアリングをする。そこで手に入る情報は極めて重要なソースになります。

「正式な情報だけが情報ではありません」とは本間さんの言葉です。

法務パーソンに求められるマインド

情報収集の次にテーマとなったのは「法務パーソンのマインド」についてです。

本間さんはセミナー内で何度も「法的に正しいことを言うのが法務パーソンの仕事ではない」と繰り返しています。

「我々がやることは分析ではなくジャッジメントなんですね。客観的な分析では足りないんです。企業の行動に結び付けなければなりません。あなたはどうすればいいのか、会社はどうすればいいのかに持っていかなければなりません。

 私は部下に、私の前で『リスクがあります』『可能性があります』という言葉を使うなとしつこく言います。それではなんのことかわからない、具体的にどうすればいいのか。どうしたいのかというふうに言わないと、企業は動けないんです」

ビジネス側の人たちの関心は、私たちはなにをすればいいのか、あるいはなにをしてはいけないのかです。

状況を聞いて、「法的にこれは契約違反になります」とか、「○○法に違反するリスクがあります」といった言葉を聞きたいわけではありません。このような分析で終わってしまう法務パーソンは、ビジネス側から嫌われてしまうと本間さんは語ります。

「そういうことをしていると信頼されません。あの人の言うことは役に立たない、さらには無責任だ、責任を取ろうとしないと言われてしまいます。正しいかもしれないが、自分がどうすべきか教えてくれないのなら意味がないと、むしろ無責任であるという評価になってしまうんです」

契約違反がある、法律違反になるならなるで、それでは企業としてどうすればよいのか、何をしてはいけないのか、そして、その選択にどのような副反応があるのかを含めて、具体的な行動および結果まで落とし込まないと、回答になりません。

正しい回答が出せるとは限らない状況下でも、常に結論を出さなければいけないというのは難しいことかもしれません。

しかし、それでも、難しいからその判断を法律の専門家ではないビジネスサイドに委ねるのは「背理だ」と本間さんは語ります。

「法的問題に関する限り、法務部門の後ろには誰もいません。法務パーソンであるあなたが判断するしかないんです」

先述の「ロイヤーとはプロフェッショナルである」という定義につながる言葉かもしれません。


後編に続く

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