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反社会的勢力排除条項(暴力団排除条項)

反社会的勢力排除条項の趣旨

反社会的勢力排除条項は、取引の相手方が反社会的勢力であることが発覚した場合にその関係を遮断するための条項です。

いわゆる表明保証条項(や誓約条項)に分類される条項であり、法務省の企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針についてに照らし、暴力団の資金源を断つ趣旨のコンプライアンスないし CSR の一環、あるいは企業防衛の一環として、この条項が埋め込まれることになります。

現実にこの条項を活用する場面は稀かと思われますが、法務デューデリジェンスでは、契約書に反社会的勢力排除条項が含まれているかどうかが反社対策の程度を表す指標のひとつとされることがあります。

公益的性格が非常に強い条項ですので、契約当事者のいずれが有利・不利となるようなものではなく、この条項にレビューを入れることはほとんどありません。当事者双方に義務が課されているかどうかだけ確認すればよいでしょう。

条文例

第○条(反社会的勢力の排除)
甲及び乙は、その役員(取締役、執行役、執行役員、監査役又はこれらに準ずる者をいう。)又は従業員において、暴力団、暴力団員、暴力団員でなくなった時から5年を経過しない者、暴力団準構成員、暴力団関係企業、総会屋等、社会運動等標榜ゴロ又は特殊知能暴力集団等、その他これらに準ずる者(以下「反社会的勢力等」という。)に該当しないこと、及び次の各号のいずれにも該当せず、かつ将来にわたっても該当しないことを確約し、これを保証するものとする。
(1) 反社会的勢力等が経営を支配していると認められる関係を有すること
(2) 反社会的勢力等が経営に実質的に関与していると認められる関係を有すること
(3) 自己、自社若しくは第三者の不正の利益を図る目的又は第三者に損害を加える目的をもってするなど、不当に反社会的勢力等を利用していると認められる関係を有すること
(4) 反社会的勢力等に対して暴力団員等であることを知りながら資金等を提供し、又は便宜を供与するなどの関与をしていると認められる関係を有すること
(5) 役員又は経営に実質的に関与している者が反社会的勢力等と社会的に非難されるべき関係を有すること

2 甲及び乙は、自ら又は第三者を利用して次の各号の一にても該当する行為を行わないことを確約し、これを保証する。
(1) 暴力的な要求行為
(2) 法的な責任を超えた不当な要求行為 
(3) 取引に関して、脅迫的な言動をし、又は暴力を用いる行為 
(4) 風説を流布し、偽計を用い又は威力を用いて相手方の信用を毀損し、又は相手方の業務を妨害する行為 
(5) その他前各号に準ずる行為 

3 甲及び乙は、相手方が本条に違反した場合には、催告その他の手続を要しないで、直ちに本契約を解除することができるものとする。

4 甲及び乙は、本条に基づく解除により相手方に損害が生じた場合であっても、当該損害の賠償義務を負わないものとする。また、当該解除に起因して自己に生じた損害につき、相手方に対し損害賠償請求することができるものとする。

条項設計の考え方

法務省の指針の別紙脚注には、次の記述があります。

契約自由の原則が妥当する私人間の取引において、契約書や契約約款の中に、①暴力団を始めとする反社会的勢力が、当該取引の相手方となることを拒絶する旨や、②当該取引が開始された後に、相手方が暴力団を始めとする反社会的勢力であると判明した場合や相手方が不当要求を行った場合に、契約を解除してその相手方を取引から排除できる旨を盛り込んでおくことが有効である。

つまり、条項設計にあたっては、基本的に次のような考え方を採用すればよいことがわかります。

  1. 法律要件に「反社会的勢力」を設定とすること。
  2. 法律効果に解除権の発生を設定すること。

このうち、法律効果である解除権の発生に関しては、たとえば、東京都の暴力団排除条例第18条2項1号において、努力義務として無催告解除条項を契約条項として定めるべき旨が規定されていたりします。

本記事では解除に関する部分は解除条項の解説に譲ることにして、以下では、法律要件の設定の仕方について検討します。


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法律要件の設定方法について

同じく法務省の指針の別紙脚注には次の記述があります。

暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団又は個人である「反社会的勢力」をとらえるに際しては、暴力団、暴力団関係企業、総会屋、社会運動標ぼうゴロ、政治活動標ぼうゴロ、特殊知能暴力集団等といった属性要件に着目するとともに、暴力的な要求行為、法的な責任を超えた不当な要求といった行為要件にも着目することが重要である。

要するに、大きくは次の2類型を要件として設定すればよいことがわかります。

  1. 「反社会的勢力」の属性要件(主体要件)
  2. 「反社会的勢力」の行為要件

属性要件による規律:反社会的勢力とは何か?

警察庁の定義に照らすと、「反社会的勢力」とは、基本的には以下の属性をもつ者をいいます。

  • 暴力団
  • 暴力団関係企業
  • 総会屋
  • 社会運動標ぼうゴロ
  • 政治活動標ぼうゴロ
  • 特殊知能暴力集団

「反社会的勢力」の概念の中核は「暴力団」です。暴力団とは、その団体の構成員(その団体の構成団体の構成員を含む。)が集団的に又は常習的に暴力的不法行為等を行うことを助長するおそれがある団体をいいます(暴対法2条2号)。暴力的不法行為等の具体的な内容は細かいですが(同法2条1号参照)、基本的に違法な行為全般をいうものと捉えておいてください。

つまり、暴力団とは、大雑把に言えば、集団的か常習的に違法行為を助長する団体ということになります。たとえば、「●代目●●組●●会」のように名乗っている団体が典型的でしょうか。

そして、「反社会的勢力」の概念は暴対法上の概念ではありませんが、警察庁主導の下で「暴力団」の概念を中心にしてその範囲が画定されています。基本的には、契約書上の概念も同じ意味だと考えてよいかと思います。

「暴力団関係企業」とは、警察庁の定義に照らせば、

  • 暴力団員が実質的にその経営に関与している企業
  • 準構成員若しくは元暴力団員が実質的に経営する企業であって、暴力団に資金提供を行うなど、暴力団の維持若しくは運営に積極的に協力し、若しくは関与するもの、又は業務の遂行等において積極的に暴力団を利用し、暴力団の維持若しくは運営に協力している企業

をいいます。要するに、暴力団に資金提供を行っている企業暴力団を活用している企業の2類型を規律しているということです。

「総会屋」とは、株主総会を攪乱してその議事進行を妨害すると脅して不正に利益を得るような者のことです。少し前までは有名な上場企業などでも総会屋が蔓延っていましたが、一括上程方式の採用など先進的な弁護士の活躍により、現在では絶滅危惧種と化しています。

「社会運動標ぼうゴロ」や「政治活動標ぼうゴロ」とは、警察庁の定義に照らせば、社会運動若しくは政治活動を仮装し、又は標ぼうして、不正な利益を求めて暴力的不法行為等を行うおそれがあり、市民生活の安全に脅威を与える者をいいます。

要するに、社会運動や政治活動を装って悪いことをするような集団ということです。黒い活動の大義名分に白い社会運動や政治活動を用いるわけです。典型的には、特定の政治思想やスローガンを掲げて対象の建物の前で怒鳴ったり暴れたりするような方々ですが、正当なデモ活動などとの判別が難しいかもしれません。

「特殊知能暴力集団」とは、警察庁の定義に照らせば、暴力団との関係を背景に、その威力を用い、又は暴力団と資金的なつながりを有し、構造的な不正の中核となっている集団又は個人をいいます。つまり、ざっくり言えば、暴力団とつながっている暴力団とは別の人たちということです。

かなり不明瞭で広汎な概念です。たとえば、特殊詐欺グループや闇金業者(違法に利息をとるカネ貸し)、仕手筋(株価操縦する人)などです。もっとも、概念として不明瞭ではありますが、暴力団の資金源を断つという趣旨からすると一貫性はあります。

以上のほかに、「反社会的勢力」との関係性に着目して属性要件を拡張することが考えられます。つまり、類とも的に「反社会的勢力」の関係者は「反社会的勢力」であろうという類推に基づいて要件を加えるわけです。

行為要件による規律:何を行うと反社会的勢力とみられるのか?

以上は、属性要件によって「反社会的勢力」を判断するという考え方でした。

もっとも、警察庁の用語の定義は法的な概念ではないため、必ずしも普遍的に通用するものではないかもしれませんし、違法・不当な行為が集団的に行われているか判断がつかなかったり、常習的に行われているか判断がつかなかったりすることもあるかもしれません。

そもそも暴力団に資金が流れているかどうかなどというのは、捜査でも入らない限りそうそう表には出てきません。考えられる調査方法はゼロではないのですが、とはいえ実際のところ、取引の相手方が属性要件に該当するかどうかは調査が困難なのです。

そこで、反社会的勢力であれば行うであろう単発の行為自体を要件に設定してしまおうという考え方に至ります。背景的なロジックとしては、実際に表面化した行為から「反社会的勢力」という主体を推認しようということです。そのような行為につき、上述の指針の別紙脚注で指摘されていた行為類型としては次の2つでした。

  1. 暴力的な要求行為
  2. 法的な責任を超えた不当な要求

いずれも一定の「要求行為」を要件に設定するものです。これに加えて、要求行為でなくとも反社会的勢力が行うような犯罪行為一般を要件に設定してしまうことも考えられるところです。

レビューにおけるポイント

第○条(反社会的勢力の排除)
甲及び乙は、その役員(取締役、執行役、執行役員、監査役又はこれらに準ずる者をいう。)又は従業員において、暴力団、暴力団員、暴力団員でなくなった時から5年を経過しない者、暴力団準構成員、暴力団関係企業、総会屋等、社会運動等標榜ゴロ又は特殊知能暴力集団等、その他これらに準ずる者(以下「反社会的勢力等」という。)に該当しないこと、及び次の各号のいずれにも該当せず、かつ将来にわたっても該当しないことを確約し、これを保証するものとする。
(1) 反社会的勢力等が経営を支配していると認められる関係を有すること
(2) 反社会的勢力等が経営に実質的に関与していると認められる関係を有すること
(3) 自己、自社若しくは第三者の不正の利益を図る目的又は第三者に損害を加える目的をもってするなど、不当に反社会的勢力等を利用していると認められる関係を有すること
(4) 反社会的勢力等に対して暴力団員等であることを知りながら資金等を提供し、又は便宜を供与するなどの関与をしていると認められる関係を有すること
(5) 役員又は経営に実質的に関与している者が反社会的勢力等と社会的に非難されるべき関係を有すること

2 甲及び乙は、自ら又は第三者を利用して次の各号の一にても該当する行為を行わないことを確約し、これを保証する。
(1) 暴力的な要求行為
(2) 法的な責任を超えた不当な要求行為
(3) 取引に関して、脅迫的な言動をし、又は暴力を用いる行為 
(4) 風説を流布し、偽計を用い又は威力を用いて相手方の信用を毀損し、又は相手方の業務を妨害する行為 
(5) その他前各号に準ずる行為

3 甲及び乙は、相手方が本条に違反した場合には、催告その他の手続を要しないで、直ちに本契約を解除することができるものとする。

4 甲及び乙は、本条に基づく解除により相手方に損害が生じた場合であっても、当該損害の賠償義務を負わないものとする。また、当該解除に起因して自己に生じた損害につき、相手方に対し損害賠償請求することができるものとする。

(公平性)両当事者が平等に義務を負っているか。

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