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競業避止/禁止条項とは

競業避止条項は、契約の一方当事者が相手方に対して、自社と同一若しくは類似の事業など(「競合事業」と言われます。)を直接(相手方が自ら行うこと)又は間接に(第三者をして行わせる、又は競合事業を行う第三者に出資する)行うことを禁止する条項です(相手方が自然人である場合には競合事業を行う事業者の役員又は従業員となることも禁止します)。

競業避止/禁止条項とは

多くの契約類型で登場する条項ですが、それらの契約類型を大きく分類すると以下の2つに分けられます。

1.(主に)企業間で締結される契約の例
製造委託(又はその性質を有する売買)契約(主に受託者/売主が義務を負う)、業務提携契約、販売店/販売代理店契約、事業譲渡契約(譲渡人が義務を負う)、合弁契約、共同研究契約、ライセンスの使用許諾契約(ライセンシーが義務を負う)、フランチャイズ契約(フランチャイジーが義務を負う)などが代表的なものとして考えられます。

2.企業と(その企業の業務を執行し又は業務に従事する)個人の間の契約の例
会社と取締役の間の経営委任契約(取締役が義務を負う)、会社と従業員の間の雇用契約(従業員が義務を負う)、フリーランスの業務委託契約(受託者であるフリーランスの方が義務を負う)などが考えられます。

本稿では、1の企業間で締結される契約のうち、製造委託契約、販売代理店契約にスポットを当てて、競業避止条項について解説します。

契約書における競業避止条項

条文例:

1 乙は、本契約の有効期間中及び本契約終了後2年間、甲の事前の書面による承諾なく、以下の行為を行ってはならない。
 (1) 自ら又は第三者をして、甲の事業と同一又は類似の事業(以下「競合事業」という。)を行うこと
 (2) 競合事業を行う第三者と競合事業について提携すること
 (3) 競合事業を行う事業者を設立し又は競合事業を行う事業者に出資すること

2 乙が前項に違反した場合、甲に対し、甲が被った一切の損害(間接損害、逸失利益、弁護士費用及び予見可能性の有無を問わず特別の事情による損害を含む)について賠償する責任を負うものとする。

上記条文例の要件

  • 本契約の有効期間中、または本契約終了後2年を経過していないこと
  • 以下のいずれかの行為を行うこと
    • (義務を負う相手方が)自ら又は第三者をして競合事業を行うこと
    • 競合事業者と競合事業について提携すること
    • 競合事業を行う事業者を設立すること、又は競合事業を行う事業者に出資すること

効果

競合事業を行った相手方は、契約違反に基づく損害賠償責任を他方当事者に対して負う

競業避止条項の意義

競業避止条項は、契約の一方当事者が開示したノウハウの流出を防ぐという営業秘密の保護の目的(図の例で言えば、A社としては、B社が競合事業を行うことで、A社がB社に開示した製品仕様などの技術的ノウハウがB社に不正に使用されることを防ぎたい)や、相手方が自社の取引と競合する取引を行うことにより、自社の利益が害されるのを防ぐという取引先(商圏)の維持を目的(同じく図の例では、A社の市場にB社という競合が登場することでA社の販売機会などの利益が奪われることを防ぎたい)として規定されます。

レビューにおけるポイント

競業行為の特定について

競業避止条項で最も重要なのは、禁止する対象の特定です。図の例のA社としては、できるだけ広く、B社の競業行為を禁止したいと考えます。そのため、A社と「同一の事業」のみならず「類似の事業」まで禁止の対象に含めるよう要求することが考えられます。

また、取り扱う商品やサービスによっては、A社の競合事業者に対して、B社が競合事業について提携(同一又は類似の製品を供給する等)することも禁止の対象とするケースも考えられます(なお、この場合は後述するように独占禁止法との関係で問題となりえます)。

一方で、競業行為を禁止されるB社としては、A社以外にも取引相手がいるのが通常なので、禁止の対象が広範にわたると、自社の他の取引が著しく制約されるおそれがあります。したがって、禁止する範囲を「対象製品の製造、販売」や「同一の事業」にとどめたりすると考えられます。

ただし、禁止の対象となる競業行為をあまりに広範に規定すると、禁止の対象の特定を欠く、あるいは公序良俗(民法90条)に反するとして条項が無効とされる可能性もあります。したがって、A社としては、自社のビジネスに必要な範囲で禁止する対象を特定する必要があります。その際には、時間的(条文例では契約有効期間及び契約終了後2年間)・場所的(例えば、日本国内と海外の別など)な範囲についても規定します。

競業行為を行う主体について

競合事業の実施方法は多岐にわたるため、A社からすると、相手方自身による競業行為のみを禁止しても、取引先の維持・拡大という目的は達成できません。

そこで、条文例では一方当事者としては競合事業を行う主体として「(相手方)自ら」の他に「第三者」が行うケースを規定し、「(相手方による競合事業者の)設立、出資」といった行為まで禁止事項に含めています。

違反した場合の請求内容

競業避止条項に相手方が違反した場合、一方当事者は当該相手方に対して、損害賠償請求ができるとの規定をします。

とはいえ、相手方が競業行為を行ったことによる損害額の算定は非常に困難です。会社法423条第2項は、取締役又は執行役が競業行為を行った場合の損害額を推定する規定ですが、実際の取引において、このような規定を受け入れてもらうことまでは難しいかもしれません。

相手方の競業行為に対する差止請求を規定することは、上述の2企業と個人の間の契約の類型では多く見られます。


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他の条項との関係

営業秘密の保護

競業避止条項の目的は、営業秘密の保護にもあることは、上述した通りです。営業秘密の保護が関係する条項としては、秘密保持条項がありますが、A社→B社への製造委託に伴い、完成品に関する製品仕様など重要性の高い技術的資料の開示が予想される場合には、秘密保持条項とは別に、貸与資料条項等において、以下の項目について具体的に規定をすることが考えられます。

  • 情報を開示できる範囲の制限
  • 情報の使用目的の限定
  • 情報の管理方法
  • 情報の返還・破棄の方法

また、取引の過程で成果物が作成される場合には、当該成果物(及び知的財産権)の自社への権利帰属相手方の使用許諾範囲の限定相手方が使用できる期間・場所等を規定する必要があります。

ただし、技術提携や共同研究開発契約などの場合は、いかに情報の使用範囲を制限しても、当該提携や当該研究に従事する人員が、相手方のためだけに別の関連する研究を行ってしまえば、実効性に限界があります。もっと踏み込んで以下の内容を競業避止条項に規定することも考えられます。

  • 契約の対象となる研究(本研究)に携わる人員は、本研究に専念する。(又は、本研究に関連又は近接する他の研究に従事しない。)

かかる制限が、共同研究開発の終了後も可能かは研究公正取引委員会のガイドライン「共同研究開発に関する独占禁止法上の指針」において「共同研究開発の成果について争いが生じることを防止するため又は参加者を共同研究開発に専念させるために必要と認められる場合に、共同研究開発終了後の合理的期間に限って共同研究開発のテーマと同一又は極めて密接に関連するテーマの第三者との研究開発を制限すること」は「原則として不公正な取引方法に該当しないと認められる」との見解が示されています。

一方で、単に「共同研究開発のテーマと同一のテーマの研究開発を共同研究開発終了後について制限すること」は「不公正な取引方法に該当するおそれが強い事項(一般指定第12項)」としています(同ガイドライン 第2-2-(1))。

なお、次章で関連する法律について記載するところ、営業秘密の保護といえば、不正競争防止法第2条第1項4号~10号も関連しますが、秘密保持条項を論じてなお論じる実益が薄いため、割愛いたします。

他の法律(独占禁止法)との関係

不公正な取引方法:流通取引規制(独占禁止法第2条第9項第6号の一般指定)

完成品メーカーが有力な場合(部品メーカーが競業避止義務を負う)

上述したように取引先(商圏)の維持の目的の関係から、相手方に対し、自社の競合事業者との間で競合事業における提携を禁止するよう要求することが考えられます。しかしながら、事業者にとっての競合排除とは、行政機関(ひいては消費者一般)から見ると自由な競争の阻害とも評価できます。

 この点について公正取引委員会は、ガイドライン「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針」において、「市場における有力な完成品メーカーが,有力な部品メーカーに対し,自己の競争者である完成品メーカーには部品を販売せず,又は部品の販売を制限するよう要請し,その旨の同意を取り付けること」は不公正な取引方法(一般指定11項又は12項)に該当する可能性が高いとの解釈を示しています。(同ガイドライン 第1部 - 第2- 2 -(1))

部品メーカーが有力な場合(完成品メーカーが競業避止義務を負う)

反対に部品メーカーが有力なケースについても同ガイドラインにて「市場における有力な原材料メーカーが,完成品メーカーに対し,自己以外の原材料メーカーと取引する場合には原材料の供給を打ち切る旨通知し,又は示唆して,自己以外の原材料メーカーとは取引しないよう要請すること」は不公正な取引方法(一般指定11項)に該当しうるとしています。(第1部 - 第2- 2 - (1))

したがって、相手方に競業避止義務を負わせる際には、自社を取り巻く環境を踏まえて、事前に自社が市場において有力であると認定され得るかを検討し、これらの規制に反しないよう規定する必要があります。

販売店契約の場合(販売店が競業避止義務を負う)

ここまで、製造委託を題材に説明してきましたが、委託の対象が完成品である場合は、製造者(供給者)と販売店(又は代理店)に取引の性質が近似していきます。

では、製造者が販売店に対し、競合事業者との取引を禁止するよう求める場合についてはどうでしょうか?

この点についても、公正取引委員会は、前述ガイドラインにて「市場における有力なメーカーが,流通業者に対し,取引の条件として自社商品のみの取扱いを義務付ける」例について一般指定11項に該当するとの見解を示しています。(第1部 - 第2- 2 - (1))

一方で、販売店が製造者に対し、競合事業者である販売店との取引を禁止するよう求めるケースについては、特に例示していません。もっとも、独占禁止法第2条第9項における「不公正な取引方法」にあたるかは、「個別具体的に判断」(同ガイドライン はじめに 3)されるため、当該製品やサービスについて自社が「市場における有力な事業者」にあたるかを含め、大手販売店は一般論ではなく個別具体的な検討をする必要はあります。

不公正な取引方法:知的財産の利用(独占禁止法第2条第9項第6号の一般指定)

 ここまで、製造委託契約の例で多くの説明をしてきましたが、製造委託においては、委託者が製造委託の対象製品についてのライセンサーであることもよくあります。
 このようなケースにおいて、受託者であるライセンシーに対し、競業避止義務を負わせることは、先述の流通取引規制とは別に、知的財産の利用にかかる制限行為が行われた、との評価がなされる可能性があります。

 公正取引委員会は、ガイドライン「知的財産の利用に関する独占禁止法上の指針」において「ライセンサーがライセンシーに対し、ライセンサーの競争品を製造・販売すること又はライセンサーの競争者から競争技術のライセンスを受けることを制限する行為は、ライセンシーによる技術の効率的な利用や円滑な技術取引を妨げ、競争者の取引の機会を排除する効果を持つ。したがって、これらの行為は、公正競争阻害性を有する場合には、不公正な取引方法に該当する(一般指定第2項、第11項、第12項)。」との見解を示しています(同ガイドライン 第4-4- (4))。

 もっとも、流通規制の場合と違い、上記の記載の直後に「当該技術がノウハウに係るものであるため、当該制限以外に当該技術の漏洩又は流用を防止するための手段がない場合には、秘密性を保持するために必要な範囲でこのような制限を課すことは公正競争阻害性を有さないと認められることが多いと考えられる。このことは、契約終了後の制限であっても短期間であれば同様である。」との、正当事由についても言及しています。

いずれにしても、流通規制とは別の観点から、競業避止条項に問題がないかを検討する必要があります。

まとめ

いかがでしょうか。競業避止条項は、自社の営業秘密の保護、取引先(商圏)の維持に強い効果を有しています。しかし、強い効果があるだけに、他の法規制にかかる可能性も高いと言えます。

自社の行うビジネスの内容・性質により、実現したいのは、営業秘密の保護なのか取引先(商圏)の維持なのかを明確にした上で、他の条項ではそれらの目的が実現できないかを検討し、相手方に対して禁止する競業行為を特定し、他の法規制にかからないかを検討することになります。

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(参考:塩野誠、宮下和昌「逆引きビジネス法務ハンドブック」(東洋経済新報社)、阿部・井窪・片山法律事務所編「契約書作成の実務と書式」(有斐閣))

執筆者:荻野 啓(GVA TECH株式会社/第二東京弁護士会所属弁護士)
監 修:仲沢 勇人(GVA法律事務所・GAV TECH株式会社/第二東京弁護士会所属弁護士)

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