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権利義務譲渡禁止条項

※20200601 民法改正に伴う内容アップデートを行いました。

権利義務譲渡禁止条項とは

権利義務譲渡禁止条項は、予期せず取引の相手方が変わることを防ぐための条項です。

条文例

第○条(権利義務の譲渡禁止)
甲または乙は、相手方の書面による事前の承諾のない限り、本契約から生じた権利義務の全部または一部を第三者に譲渡し、もしくは担保に供し、または引き受けさせてはならない。

違反の要件

第三者に対する債権譲渡・債務引受け。
相手方の書面による事前の承諾がないこと。

違反の効果

  • 契約違反の一般的な法的効果(解除、期限の利益喪失、損害賠償など)。
    ※民法改正に伴い、上記条文のみで当該効果が維持されるかについては疑義あり。
    ※債権譲渡は原則有効、例外的に無効(民法466条2項)。
  • 併存的債務引受け。

債権譲渡について

契約によって発生する権利は債権です(約定債権)。

そもそも債権については、原則として、譲渡や移転が自由です(民法466条1項本文)。なぜならば、債権を取引の対象に含めることで、商品としての流通促進や円滑な金融の促進など、経済活動が促進されるからです。依頼した人にしかできないような行為債務の履行など、権利の性質上、例外的に譲渡を許さないということもありえますが(民法466条1項ただし書)、基本的には、権利の譲渡や移転は法律上禁止されていません。

これまでは、債権につき、譲渡や移転を禁止する旨の特約をつければ、特約違反の債権譲渡を原則無効とできました(民法466条2項本文)。これを「譲渡禁止特約」と呼んだりします。なぜこのような特約をつけるのかといえば、権利が自由に譲渡されてしまうと、債務者としては、取引の相手方が予期せず変わってしまうので、それを避ける必要があるからです。

法律上の扱いとして債権者は没個性的であるということになっており誰が債権者であっても同じなのだとされるのですが、現実のビジネスは、お互いの信頼関係で成り立っていますから、いきなり別の人や企業が取引の相手方になると困ってしまいます。そこで、このような譲渡禁止特約をつけるわけです。

しかし、2020年4月1日施行の改正民法では、このルールが変更されました。「譲渡禁止特約」を契約書に明記していたとしても、原則その債権譲渡は有効として取り扱われます(新民法466条2項)。理由としては、上述した、債権譲渡による円滑な金融の促進等を重視したためと言われています。

なお、あくまで「原則」と留保したのは、「譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった(債権譲渡の)譲受人その他の第三者」に対しては、債権譲渡がされていようとも、債務者は自身の債務の履行を拒んでよいことになっているからです(新民法466条3項)。さすがに譲渡禁止特約があるのを知って譲り受けていた人まで保護する必要はないよね、という価値判断です。

とはいえ、債権譲渡禁止特約は原則有効・例外的に無効へと民法のルールが逆転したことには注意する必要があります。なぜなら、この帰結として、これまで契約書に記載されていた権利義務譲渡禁止条項では、債権譲渡を防止する効力が弱まってしまったからです。

そこで、以下旧法下で一般的であった条文の意図、新法下で考えられる対策に分けて解説します。

<旧法を前提とした条項の解説>

上の理由から、「事前の承諾」を要件として設定することで、予期しない取引相手の変更を防止することができるのです。これに加えて、「書面による承諾」の要件を設定すれば、口頭や電話越しでの承諾などの場合よりも証拠が残りやすくなりますので、言った言わない論争のような後日のトラブルを防止しやすいと考えられます。

承諾のために書面をつくるのは手間だということであれば、「書面または電子メールによる承諾」でもよいでしょう。このあたりは、自分自身のビジネスによって負担を軽くしておくほうがよいかどうか、検討する余地があります。

<新法において考えられる債権譲渡の対応策>

法律上、債権譲渡禁止特約があっても債権譲渡が原則有効となったことから、法的なサンクションを期待することは難しくなりました。そのため、契約書中で、
①債権譲渡特約に反して債権譲渡をする場合には、債権の譲受人に、債権譲渡特約があることを示す義務を追記すること
②債権譲渡を解除事由に入れること
③債権譲渡をした場合の違約金の設定をすること、という対策により、債権譲渡特約違反による債権譲渡を防止すること
が考えられます。

なお、このうち、①については、新法下でも例外的に債権譲渡が無効となる要件である、「譲受人の悪意・重過失」を契約上の義務として作出しようという意図です。

※②解除事由とする点、③高額な違約金を設定する点については、法の趣旨に反するため無効となるのではないかとの見解もあります。今後の実務の積み重ねにより、スタンダードな条項が決まっていく条項である点に注意してください。

債務引受けについて

これに対して、免責を伴う債務の引受けは、原則として、債権者の承諾がなければできません。

なぜならば、債務の履行は、債務者の個性、とりわけ債務者の資力や信用を基礎とするからです。簡単に言うと、まさにその人を信用して履行をしてもらう決断をしたのに、その人以外が履行することになるとすると当初の期待に反してしまうのです。

仮に承諾をせずに第三者に債務を引き受けさせると、併存的債務引受けとなり、債務から免れることができないだけでなく、引き受けた者と合わせて債務者が2人に増え、それが連帯債務となる結果になってしまいます。上のような免責的債務引受けを行うためには、法律上は債権者の承諾が必要なのです。

したがって、特約で債務引受けを禁止することは、法律上の原則を確認するという意味しかありません。むしろここで重要なことは、事前の承諾の方法が、口頭なのか、書面なのか、電子メールなのかといったところです。

補足

結局のところ、権利義務移転禁止条項の存在意義は、債務者にとって予期せず債権者が変わってしまうことを防止することと、承諾の方法を明らかにすることに意味があるわけです。そして、現実の契約では債権債務関係が一方的なものであることは稀であり、双方向的なことが常ですので、いずれの立場にたってもこの条項を入れることが多くなります。また、どのような契約類型でもそういえますので、一般条項に位置づけられています。

なお、あまり多くはありませんが、事業譲渡に関する記載があることもあります。

レビューにおけるポイント

第○条(権利義務の譲渡禁止)
1.甲または乙は、相手方の書面による事前の承諾のない限り、本契約から生じた権利義務の全部または一部を第三者に譲渡し、もしくは担保に供し、または引き受けさせてはならない。

2.甲または乙が前項に違反した場合、相手方は本契約を解除することができる。

3.甲または乙は、第1項に違反して本契約に基づき生じる債権を第三者に譲渡する場合、債権の譲受人に対して前項の譲渡禁止特約が付されていることを内容証明郵便により通知し、当該通知書の原本証明付きの写しを相手方に交付しなければならない。なお、この場合、第1項の違反とはならないものとする。

(内容)譲渡・移転・引受けの対象は何か。
(公平性・必要性)主体は誰か。
(手続負担)事前の承諾を要求されているか、承諾は書面による方法か。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

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2020/06/01 改定
弁護士 仲沢勇人
(GVA法律事務所/GVA TECH株式会社/第二東京弁護士会所属)

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