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企業法務担当者が押さえておきたい、ビジネスで登場する頻度の高い契約類型を解説

企業法務担当者、特に若手企業法務担当者の主な業務として契約書レビューがあります。

若手のうちは上司から定型的な契約書レビュー依頼から始まり、慣れてきたら非定型な契約書も契約書レビューが行えるようにと、さまざまな契約書のレビューを任されることになります。最初のうちは契約の類型のあまりの多さに戸惑ってしまい、どのように契約書レビューをすれば良いか分からないといった方も多いのではないでしょうか。

民法上の典型契約は13種類(贈与、売買、交換、消費貸借、使用貸借、賃貸借、雇用、請負、委任、寄託、組合、終身定期金、和解)であるのに対し、実務で見かける契約は非常に多種多様な類型の契約書があります。

各社のビジネスによって頻出する契約類型は異なりますが、売買契約書、業務委託契約書、秘密保持契約書、取引基本契約書などは定型的な契約書として、どの企業でも多く取り扱うのではないでしょうか。

そこで本記事では、売買契約書、業務委託契約書、秘密保持契約書、取引基本契約書について、契約書レビューに当たって注意すべき事項・条項を解説します。どんな業種や事業においてよく見られるかという点も併せてご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

売買契約書

売買契約書は、あらゆるビジネスにおける基本となる取引です。したがって、売買契約書における各条項について押さえておくことは、契約書レビューで遭遇するさまざまな類型の契約書をレビューする際に役に立ちます。

売買契約書は、どの業種でも見る事になる契約類型ですが、その中でも多いと思われるのが不動産業や製造業、小売業といった業種でしょう。

売買契約書は、自社が売主の立場なのかそれとも買主の立場なのかによって注意すべき条項やレビューの仕方が異なる点に留意が必要です。売買契約において特に注意すべき条項は以下の二つです。

引渡し

売主・買主いずれの立場においても重要な条項の一つです。特に売主にとっては売買の目的物を買主に引き渡すのが契約上の義務の中心となるため、引渡しと所有権移転の関係がどのように定められているかという点は非常に重要です。

目的物が動産の場合には、引渡し後に検収や検査など買主が目的物の性能や品質を確認するといった手続きが設けられていることが多いでしょう。こういった手続きについて、誰がいつまでに行い、どのような条件を満たせば合格となり、引き渡しが完了するのか。また不合格の場合はどうなるのか、検査が行われない場合はどうなるのかといった点について明確にする必要があります。

以上を踏まえた引き渡しの条項を確認する場合のチェックポイントは以下の通りです。

  • 誰がいつまでに行うのか
  • 合格・不合格の基準は明確か
  • 不合格の場合にはどのような手続きになっているか
  • 期間内に行われない場合には引き渡しが完了したと扱うことができるのか

契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任)

目的物が、種類・品質・数量などの点において、当事者が合意していた内容と異なる場合買主が売主にその責任を追及するための条項です。旧民法時代は瑕疵担保責任と呼ばれていました。

売主の立場からは、目的物の種類・品質・数量など、売買契約書の重要な事項について、合意内容との相違があった場合に責任を負う範囲を決める点で非常に重要です。また、買主の立場からもこうした場合に、売主に対して、どのような責任を追及できるのかという点でも非常に重要な条項です。

契約不適合責任で重要なチェックポイントは以下の通りです。

  • 目的物の種類・品質・数量など、納品されるべき目的物に関する合意内容は契約書中で明確になっているか?
  • 期間はいつからはじまっていつまでになっているか?
  • 効果はどうなっているか?

契約不適合責任についての詳細はこちらをご参照ください。

まず、売主買主双方にとって重要なのが、目的物の種類・品質・数量などが契約書内で明確に定められているかという点です。

例えば、機械の売買であれば、単に「本契約に適合しない」といった抽象的な定めだけではなく、仕様書等に定められた性能や出力など数値化できる客観的な基準を満たしていることが契約上求められていることが重要です。

次に、責任を負う期間も重要です。これは売主としては1年程度としたいのに対し、買主としてはより長い期間を希望するため重要な交渉のポイントの一つとなります。

ただし、下請法の適用を受ける場合には買主が1年より長い期間を設定しても、無効とされるケースや下請法違反となるケースがあります。安易に期間を長く設定するのではなく、その取引に適用されるさまざまな法令を考慮し、その中で自社に最も有利となる条件を設定する必要があります。

そして、契約不適合責任を負う場合にどのような効果が定められているのかという点もポイントになります。特に代替物の納品や修補が定められている場合には、買主のみが追完方法を選択できるのか、それとも売主も選択できるのかという点は重要です。特に民法562条第1項但書きの規定は買主の立場からは適用を排除すべきか検討する必要があるでしょう。


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業務委託契約書

民法上には無い類型の契約書です。作業の委託を行う場合に締結される契約で、実務上よく見かける契約類型の一つです。業務委託契約書において重要なのは法的な性質をどのように解釈するかにより、定めるべき内容や収入印紙の有無まで変わる契約類型であるという点です。実際のビジネス理解とその理解を契約書への反映できるかという点でレビューに当たる法務担当者の力量が問われる契約類型の一つと言えます。

IT系の特にシステムの導入などの作業を受けるビジネスなどで頻出する契約書ですが、それ以外にも運送業などでも見られる契約類型であり、作業などを受注・発注する会社であればよく見かけることになるでしょう。

請負契約なのか準委任契約なのか

民法上、「仕事の完成」を目的とする請負契約と、事実行為の実務の委託を受ける準委任は異なる性質の契約ですが、実務上はその境界線は極めて曖昧です。特にシステムの開発業務については、委託者は正常に稼働するプログラムの完成を求めたいがために請負契約とすることを希望し、受託者はプログラムに不備はつきものであることから、準委任契約書とすることを希望する、というケースがよくあります。

また、システムやプログラムの開発を目的とする場合など成果物が発生する場合には、その成果物に発生する著作権が誰に帰属するのかという点についても明確にしておく必要があります。

以上から、主なチェックポイントは以下の通りです。

  • 成果物はあるのか?ある場合には何か?
  • 成果物について受注側はどのような責任を負うことになっているか?
  • システムやプログラムの権利は誰に帰属することになっているのか?

この他にも発注者の立場からレビューを行う際は下請法の適用の有無を確認した上でレビューする必要があります。下請法違反の契約を作成してしまうことのないように留意しましょう。

秘密保持契約書

取引の検討を行うために締結される機会の多い契約類型です。主な内容としては秘密情報を受け取った者に秘密保持義務や目的外使用の禁止、秘密情報に基づく知的財産権の取得の禁止などを義務づける内容となっています。契約書内に必要な定めがない場合に民法による補足が難しいため、以下のチェックポイントに挙げる条項の定めがあるか丁寧に確認する必要があります。企業におけるボリュームゾーンの契約書であるため、新人企業法務担当者がレビューする機会の多い契約類型の一つと言えるでしょう。

チェックポイントは、以下の通りです。

  • 秘密情報の定義が適切か(広すぎたり狭すぎたりしないか)
  • 秘密情報の開示の目的の記載は適切か
  • 秘密保持義務や目的外使用の禁止、終了時に返却や廃棄の定めがあるか
  • 知的財産権の取り扱いはどのようになっているか

秘密情報の定義を確認する際には、秘密情報に含まれるためにどのような手続きが定められているかという点です。特に文書やデータで開示した場合ではなく、口頭で開示した場合や視覚的に見せた情報などが秘密情報に含まれるためにはどのような手続きが必要になっているかは必ず確認しましょう。その他にも、秘密情報に「秘密」や「confidential」などの表示が必要なのかなど、自社が守りたい情報が秘密情報としてこの契約で保護を受けることができるように適切な定義を設定する必要があります。

また、開示の目的については互いに予期せぬ目的外使用を避けるために、可能な限り具体的に記載することが必要です。

守秘義務や目的外使用の禁止などの定めについては、秘密保持契約書として最低限必要な義務です。一つでも抜けていたら上司や先輩から厳しく指導をされることになりますのでこういった点は特に注意してレビューを行いましょう。

取引基本契約書

企業間の取引は、多数の取引が継続的に行われることが想定されているため、その全てについて個別に契約書を締結するのでは無く、基本的な事項を基本契約書で定めておき、個別の取引では注文書と請書のように簡易な書式で取引を行うといったケースも多く見られます。

こうした際に取引の基本事項について定めるのが取引基本契約書です。取引基本契約書は企業間で多数おこなわれる取引に適用されるいわば基本ルールとなるため、非常に重要な契約であり、取引が売買なのであればこれまで説明した売買契約書において注意すべき事項などは特に注意してレビューを行う必要があります。

また、取引基本契約書においては、継続的な取引が前提となっているため、売主の立場としては相手方の経営状態や信用状態が悪化した場合には直ちに契約解除が可能になっているかという点や、代金債権について直ちに請求が可能となっているか、いわゆる期限の利益の喪失の定めについて注意してレビューを行う必要があります。 


さまざまな契約のチェックすべきポイントについて解説してきましたが、全ての契約に共通して重要な点は、取引の流れが正しく契約書に反映されているかという点です。どんなに自社に有利な契約条項をドラフティングしても、実態に即していなければ有益どころか無用の紛争を呼び込むことになりかねません。目的物や人の動きなど形のあるものがいつの時点でどこにいて、それが契約の履行とどのような関係に立つのかを明確に示せているかという点を意識して契約書のレビューを行いましょう。こういった点は必ず先輩や上司は確認しています。

取引の内容を正確に理解していることを示せれば大きなアピールになります。是非この記事を日々の業務に役立てて頂ければと思います。

的確な契約書レビューをもっと効率的に

昨今、こうした契約書の定型的なチェック事項を、より早く、より正確に検知・修正する手段として、AI契約レビューツールが注目されています。

弊社のAI契約レビューツール GVA assist(ジーヴァ アシスト)は、我々提供者側が作成した基準だけでなく、「自社の契約書審査基準」をセットし、レビュー時に活用することができます。

例えば、上記の「条文例」を自社標準ひな型としてセットしておくことで、レビュー時に条文が不足していればすぐに契約書に差し込めるようになり、リサーチにかかる時間を省略できます。

他にも、「リスクワード」「チェックポイント」「論点の考え方」といった情報を GVA assist にセットすることで、契約書上のリスク発見、条文の受け入れ可否検討、法務としての見解などの「基準」を、他の法務担当者とWord上で共有し、共通のナレッジを基に契約書レビューができるようになります。

GVA assist を使うことで、法務担当者間での基準のばらつきをなくし、契約書レビュー業務のスピード向上と品質アップを実現できます。ぜひ一度、GVA assist の機能紹介ページもご覧ください。

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