GVA assist は、テクノロジーで契約業務に関する課題解決を目指すだけでなく、企業の法務パーソンの方々のお役に立てる情報発信を行っています。その一貫として、企業法務に携わる方々向けのセミナーも随時開催しています。
今回は、契約オペレーション全体の最適化を進めるサービス「ContractS CLM」を展開しているContractS株式会社の津田 奨悟氏を講師に迎えし、弊社の仲沢 勇人弁護士と「法務DXを推進するためのポイント」について熱い議論が交わされました。
本まとめは前後編でセミナーをレポートいたします。
津田 奨悟
ContractS株式会社 経営企画部 部長
新卒で旭硝子株式会社(現AGC)に入社。ガラス製造プロセスエンジニアとして世界初のモバイルデバイス用ガラス上市立上に貢献。その後、デロイトトーマツコンサルティングにて主に化学素材企業向けに新規事業戦略立案、技術マーケティングなど事業成長に貢献するプロジェクトに従事。その後、外資系企業2社で経営企画・事業企画を歴任。直近ではアドビ日本法人において、サービス事業の経営企画として営業、コンサルティング、カスタマーサクセスを横断してマネジメント。2020年8月より現職。
仲沢 勇人
弁護士法人GVA法律事務所 弁護士/リードアソシエイト
GVA TECH株式会社 リーガル部門統括マネージャー
一橋大学法科大学院卒業後、司法試験合格を経てGVA法律事務所に入所。2018年頃よりGVA TECH株式会社に参画。2020年よりGVA TECH株式会社のリーガル部門統括マネジャーに就任。顧客に対するサービス導入コンサルティングとリーガルコンテンツの監修業務などを行う。
目次
脱はんこだけではない契約オペレーションの最適化
まずはじめに、ContractC株式会社 津田様よりお話をいただきました。
津田様(以下、津田):
今日はまず、CLMの概要、CLMとはなにかという話をいたします。後段のディスカッションで実際の運用についてお話ししますので、まずはここで「CLMとはどういうものなのか」をご理解いただければと思います。
最初にマーケットのお話からさせてください。
CLM、聞いたことがある方もそうではない方もいらっしゃるかと思いますが、コントラクト・ライフサイクル・マネジメントを略してCLMと読んでいます。”契約オペレーション全体の最適化”と言ったりもしますが、契約業務はご認識の通り”はんこ”だけではなく、締結前の業務、締結業務、締結後の業務と、長い業務プロセスがあり、これらをそれぞれ単独業務としてでなく一連の業務と考えて、オペレーション全体の最適化を図る考え方です。
弊社が行ったアンケート調査では、電子契約導入後も依然として多く残る"紙での締結"について、「電子契約システム導入後も紙の契約書を締結したことはありますか?」という問いに対して92%のお客様が「ある」と回答しています。
コロナ禍の2年間で、電子契約は「あったら便利」というものから「なくてはならないもの」に変わりました。それでも、契約は相手先企業があってのことなので、紙がまだまだ残ってしまいます。そういった状況においては電子契約だけでは足りない、ということがアンケート結果からもわかりました。
一般的に契約オペレーションの最適化というと、どうしても”はんこ”にフォーカスが当たりがちなのですが、締結前には作成、交渉、レビュー承認といった長い業務プロセスがあり、そのなかでメール、チャット、電話、Word、Excelといったツールが散在し、情報がバラバラに散逸しているという課題があります。
はんこのあと、保管、更新、変更、終了のフローでも、「なんでこの条件になったんだっけ?」という場合、過去の履歴やステータスとセットで管理していないと、最終のドキュメントだけを見ても正確な情報を得られません。
履歴やステータスとセットになって初めて情報として意味があるのに、そこまで全然できていないのがよくあるケースです。契約オペレーション全体の最適化においては、”はんこの前後”こそが、本質的な課題と考えています。
弊社が提供する「ContractS CLM」は、そういった契約業務の課題にお気づきになられた伝統的な大企業からスタートアップまで幅広くご導入いただいており、おかげさまで現在、日本国内での契約管理サービス市場シェアNo.1です。
ContractS CLMで法務業務を20%効率化
津田:
つぎに、CLMとはなにか、について解説します。
CLMで契約オペレーションを最適なかたちに仕組み化する、と一口でいいますが、契約業務の各プロセスでWord、Excel、電話、メール、最近ではチャットツールなどさまざまなツールが使われています。さらにはデータのやり取りがデジタルだったり紙だったりするわけです。
これら一連の契約業務をクラウド上で一元管理できるのが、弊社の ContractS CLM です。
ContractS CLM が行っている価値提供は大きく分けて3つあります。
- 関連契約もまとめて管理できるので、経営視点でいうと内部統制とリスク管理が可能になります。
- 情報がすべてまとまっているので、法務の方はいつでも必要な情報が分かる状態を担保できます。
- 事業部側ではプロセスが分かりやすくなるのでリードタイムの短縮に繋がります。
バックオフィス系のプロダクトやソリューションは、事業に与えるインパクトが定量的に見えにくいという欠点がありました。
しかし、実は定量化に関する調査があります。ひとつは不適切な契約管理は収益の9%の損失に繋がるというデータです。また、CLMソリューションを導入することで、事業部門や法務部門の工数を20%以上削減できるというデータもあります。
バックオフィス系の話はなかなか投資対効果が見えにくいということがありますが、定量的な効果もあるということです。
弊社のお客様の事例には、さまざまなツールを利用していて情報が散財していた状況から、ContractS CLM を活用して情報管理を行ったところ、年間で914時間の削減、ないしは550万円相当のコスト削減につながった、というお客様もいらっしゃいます。
【PR】契約書レビュー業務の効率化を実現する、
AI契約審査クラウド
GVA assist
契約審査業務にフォーカスしたGVA assist
続いて、弊社仲沢より、契約書レビュー業務に関するプレゼンテーションを行いました。
仲沢:
弊社のサービスは、先ほどのContractS CLMとは対称的に、契約審査業務にフォーカスして課題を解決するプロダクトです。契約審査業務、負担が大きくないですか?その負担を解決するのが GVA assist です、とご理解いただければと思います。
そもそも契約審査業務を分解してみると、「契約書を読んで、直して、最後に仕上げる」という3つのステップに分けられます。皆さんも普段の審査業務は、契約書を読んで直して仕上げて、事業部に戻して、というフローなのかなと思います。この各プロセスの負担を軽くするAI契約レビューが、 GVA assist です。
機能は色々とあるのですが、代表的な機能としては、リスク検知、レビュー論点の抽出、論点ごとの豊富な修正例などが挙げられます。また、表記揺れや条番号のズレといった形式的なミスもWordアドインで一括修正できます。ほかにも、400種類以上の契約書雛形もプリセットで搭載されていますので、ドラフト時の負担も解決します。
現在(2022年1月時点)大手企業からスタートアップ、法律事務所など併せて300以上の導入実績があります。
GVA assistの使い方を徹底解説
GVA assist の機能は、大きく分けて3つあります。
- 契約書レビュー機能
- 条文検索機能
- 雛形ダウンロード機能
ほかにも、Wordアドイン版だと1クリックで修正できる形式チェック機能もありますが、今回は、1つ目の契約書レビュー機能をご説明します。
使い方としては簡単です。GVA assist にブラウザでアクセスし、先方から届いた契約書をドラッグ&ドロップしていただきます。そうすると画面が左右に分割され、左側はアップロードした契約書(以下「審査契約書」と呼びます)が表示されます。この契約書を GVA assist が条文ごとに分割して、読み取っています。
右側には GVA assist のデータベースに入っている”理想の契約書の雛形”が表示されます。「審査契約書はこの理想の契約書と比較したらいいんじゃないですか」というように、システムがレコメンドしている状態です。
今回、秘密保持契約書の双方開示の内容でご説明していますが、あとは契約審査を開始するボタンを押すだけで、判定画面に移っていきます。
この判定結果をどうレビューに活かすのか。
まずは第1条から条文を読んでいきましょう。第1条開示目的、第2条秘密情報の定義など、順番に並んでおり、審査契約書上に「リスク単語」や「不足単語」などのタグが表示されています。
リスク単語は「審査契約書内でこのままにしておいていいですか?ちゃんと検討してくださいね」というときにタグで知らせてくれています。この条文でいうと、「秘密情報の定義で知り得た情報まで含んでいますよ、ちょっと広すぎるのではありませんか?」とアラートしてくれています。
次に、不足単語は「審査契約書の条文のなかにはあなたの立場だったら通常入れておくべき要素が欠けていますよ」と教えてくれています。なにかが欠けていると分かった段階で、右側の画面を見ていくと、理想の契約書雛形から”適した修正例”と”契約審査に関するナレッジ”が入っている条文を、AIがサジェストしてくれます。推奨条文を見てみると、不足単語と同じような色合いで、秘密である旨の明示、個人情報周り、独自に開発した情報というところに、不足単語のアラートが出ています。
あらためて左側をご確認いただくと分かる通り「この第2条は秘密である旨の明示が欠けているけど追加しなくていいの?個人情報周りの言及もないけどいいの?独自に開発した情報が除かれていないけどいい?」と教えてくれているので、あとは右側を参考に条文を調整すればこの論点を潰すことができました。
また、推奨条文のとおりに直したけど先方から更に修正された場合、GVA assistは助けてくれないのかというと、そうではありません。
推奨条文のとなりにオプション条文が入っています。ここには様々な条文や譲歩案が蓄積されていますので、このなかから適切な条項を選択して、譲歩案としてご利用いただくこともできます。
この2つのタグの他にも、たとえば第12条 類似の検討取引の禁止に「審査契約書にしかない条文」というアラートも出ています。これはどういった意味合いかというと、GVA assistは理想の雛形との比較、参照、活用を通じて契約審査業務を軽くするのですが、審査契約書に”理想の雛形には入っていない条文”も当然あります。審査契約書にしか入っていない条文は「類型的に望ましくない、注意して欲しい条文」とご理解いただければと思います。
こういった要領で、下まで見ていただいたら、次は不足条文をチェックしていただきます。これは「理想の雛形にはあるけど、審査契約書にはない内容」について教えてくれます。審査契約書に追記したい条文を1クリックすると全文がタイトルも含めてコピーされますので、あとはお手元のWordにペーストしていただくだけOKです。
以上でこの契約書についてはレビューが完了したという状態になります。
そのほか、フリーワードでの条文検索や400種類以上の契約書雛形のダウンロード、Wordアドイン版には条番号ずれや表記揺れを一括で修正してくれる形式チェックがあったりしますので、こちらも方も気になった方はお問い合わせいただければと思います。
セミナーアーカイブ動画
後編では、津田様と仲沢のディスカッションを通じて、法務DXについて考えを深めていきます。