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激変するビジネス環境の中、法務パーソンが自身の価値を高めていくために必要な考え方(後編)

世界50ヵ国以上でグローバルに展開する Chubb グループに属する Chubb損害保険株式会社で、法務部長兼募集文書管理部長を務める藤本和也氏。日本の弁護士資格を持ち、世界各国の法務パーソンと接する藤本氏に、日本の法務パーソンがこれからどのように自身の価値を高めていけばいいのか、話をお聞きしました。

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「これからの企業法務の話を聴こう」

リーガルテックの導入などを通じて法務業務の効率化を実現した"その先"に、法務部門として何をすべきか、未来に向けて先進的な取り組みを実践されている法務の方に、そのお考えや実践内容についてじっくりお話いただくインタビュー企画です。

これからの企業法務について

国内司法試験に挑戦するのも有力な選択肢のひとつ

ーーでは、法務パーソンが激変するビジネス環境の中で、自立するためにはどうするのが良いのでしょうか?

藤本和也氏(以下、藤本):
いろいろと方法はあると思います。自身に法務の領域で希少性を生み出ことのできる何か強みがあれば、それを発揮するということでしょう。

その有力な方法として、弁護士資格を取るという選択肢があると思っています。

ーー法務パーソンが弁護士資格を取ることで得られるメリットはたくさんありますが、あえて司法試験に挑戦することを勧める理由はなんですか?

藤本:
仮に、法務部門がなかなか存在感を発揮できない状況にあるとした場合、そのような環境下でどうやって自らの存在感を発揮していくのかを考えると、他部門のメンバーや社長も含めた経営陣から、「この問題は法的に問題がありそうなので、あいつに聞いておこう」という状況になればよいのではないかと思います。そのためには、弁護士になるのが早い、というのが正直なところなんですよね。もちろん個別の会社の状況によるわけですが。

 グローバルな視点からも見ても、その国の法的問題を取り扱うのであればその国の弁護士であるということが当然の前提にされていると思います。諸外国を見ても、法務部門のコアメンバーは弁護士資格を持っている人が圧倒的に多いというか、それがほとんどだと思います。

 グローバルでビジネスを行う際には、関係する他国の規制や法解釈を踏まえる必要があります。その際には、関係する他国に展開しているグループ企業の法務部に連絡したりするのですが、その際、連絡相手がその国の弁護士でなければ、正直安心して相談できません。

 他国の法的問題について課題が生じた場合、その国の弁護士に相談したのであれば話はわかるのですが、その国の弁護士ではない人には相談した場合、あとから何か問題が起きた場合、「なんで弁護士でない人にわざわざ相談したんですか?」、と問われる可能性があります。

 日本の司法試験に合格して日本の弁護士資格を取得したのであれば、日本法という観点では一定程度確立した存在になることができますし、日本法に関する実力の証明になりますので、いまから法務パーソンとして存在感を発揮するためのひとつの方法論として、弁護士になるという選択肢は残しておいたほうがいいと思っています。

ーー弁護士資格を取ることで、人生の選択肢も広がっていきます。

藤本:
おっしゃるとおりです。会社としては受かったら辞められてしまう可能性が高まる訳ですが、逆に自分自身の社内における自由度が高まる訳です。ある程度好きなことが言えるようになりますので(笑)。

 いざという時には会社を出ることも辞さずという覚悟を持って仕事を行うことにも繋がりますしね。

ーーとはいえ、法務パーソンが日々の業務をこなしながら司法試験を目指すのはかなり難易度が高いですね。

藤本:
たしかにハードルは高いと思います。ただ、希少性の高い人材になるためには、何らかの高いハードルを乗り越えるとか、他の人にはできない能力を身につけるといったことが必要なんですよね。その人じゃなくてもいい、その人の代わりはいくらでもいるという状況では、他の人に代えられても文句は言えないですからね。

 法務パーソンにとって司法試験という関門がある。その関門を乗り越えることによって、専門家として法務部にいる必然性を認められることにも繋がります。ハードルが低かったらあまり意味がないのではないでしょうか。


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センシティブな相談を受けることで理解できる真意

ーー経営陣の期待や要望を正しく理解する、把握するといったことにも効果がありますね。

藤本:
弁護士であることによって、経営陣から直接相談を受ける場面が生まれやすいですね。

 なぜ弁護士には安心して相談できるのかというと、弁護士には法律上の秘密保持義務や利益相反回避義務があるというのが重要なところです。法制度的に重大な義務を負っている存在であることに対する信頼が相談を容易にしてくれるんです。弁護士であることにより、経営陣は経営にとって非常にセンシティブで秘匿性の高い話であっても相談してくれる可能性が生まれます。

 弁護士が弁護士の資格を失う行動をすることはないという信頼のもとで相談してくれる訳であり、相談される側としても秘密を漏らして資格を失うようなことはしません。弁護士が秘密を漏らしていると、自分の生活に困ることになります(笑)。

 そういう立場で深いやり取りをすることで、経営陣の考え方や、経営陣の悩みを正しく理解でき、その悩みに対してどうアドバイスするべきかというアイデアや方向性が生まれてきます。

ーー多忙な日々を送る中で、司法試験に挑戦しようと考えたら、藤本先生ならどうしますか?

藤本:
ルートは2つあります。一念発起して会社を辞めて全力投球するか、働きながら勉強をして予備試験を受けるか。

 いまは受かりやすい時期だと思うんですよ。司法試験制度が始まって以来、最も受かりやすい時期になっていると思います。会社を辞めて挑戦するのであれば、2〜3年分の軍資金を貯めて必死に勉強する。配偶者が働いているのであれば、事情を話して協力してもらう。

 司法試験というのは多少博打みたいなところがありまして、試験を受けても受かる保証はないんですよね。ただ、受けない限り受かることはありません。ただ、何事もやってみなければわからないということじゃないでしょうか。転職してうまくいくこともあれば、逆にも失敗することもある。よかったかどうかなんて、やってみなければわからないと思いますよ。

 ただ、私から個別の人に「あなたは司法試験を受けたほうがいい」とは言えませんよね。司法試験を受験したために厳しい人生になってしまった人もいますので。その人の生き方の問題であり、最終的には本人が覚悟を決めてやるかどうかですから。

これからの法務パーソンに向けて

ーー少し目線を変えた質問です。法務パーソンが事業部側に移った場合、法務部時代のスキルをビジネスサイドで発揮できる場面にはどんなシーンがありますか?

藤本:
これは業種によりけりだと思います。金融や保険など、商品が契約関係だという業種であれば、法的知識をうまく活用できる場面もあると思います。法務出身のビジネスパーソンが、そのスキルを活かしてビジネスサイドで活躍する余地は十分にあると思います。

 一方、あまり法的知識が関係ない職種では、法的知識の活用する場面は少ないでしょう。たとえばメーカーにおいて、モノづくりそのものに対して法律の知識が直接必要になる場面は比較すると少ないでしょうし、営業においても、金融や保険などに比べると法的知識が活きる場面は相対的に少ないのではないかと思います。

ーーありがとうございます。最後に、現在の法務パーソンを取り巻く環境を踏まえてメッセージをお願いします。

藤本:
現在、ビジネスを取り巻く環境は急激に変化していると思います。かつて、高度経済成長時代には、現在と比較すればルール違反に対する制裁は厳しくないという状況があったのかもしれません。

 しかし、昨今では社会が成熟し、違法なことをしたら企業は市場から退場を余儀なくさせられてしまうというビジネス環境になりましたから、当然のことながら「退場させられることなくビジネスを続けていくためにはどうすればいいか」を経営陣は考えないといけません。

 複雑に絡み合った各種の高度な規制の中で、ルールの範囲内で自社の活動を展開しようとするならば、自社が抱える法的リスクを適切にコントロールすることが可能な人材を自社の幹部メンバーに加える必要があります。

 そうすると、現在自社の法務部に法的リスクを適切にコントロールし得る人材が存在しているのかどうかという点が問われることになります。契約書の文言チェック、誤字脱字の修正ができる人材が法務にいたとして、果たしてその人材で法的リスクを適切にコントロールすることが可能となるのかどうか。そのような人材では不十分だというのであれば、外から適切な人材を連れてくることになるでしょう。

 経営の役割としては、自社が置かれた規制環境において自社の法的リスクを適切にコントロールできる人材を連れてきて任せることが重要であり、既存の人材がそのクオリティを満たす人材であれば社内から、そうでない場合には社外から連れてくればよいということです。

 自分が法的リスクを適切にコントロールすることを可能とする人材であることを、周囲や経営陣に認めてもらう必要があるわけですから、そのためにはどのように自身の価値を高めていくか、という視点が必要なのだろうと思います。

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