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激変するビジネス環境の中、法務パーソンが自身の価値を高めていくために必要な考え方(前編)

世界50ヵ国以上でグローバルに展開する Chubb グループに属する Chubb損害保険株式会社で、法務部長兼募集文書管理部長を務める藤本和也氏。日本の弁護士資格を持ち、世界各国の法務パーソンと接する藤本氏に、日本の法務パーソンがこれからどのように自身の価値を高めていけばいいのか、話をお聞きしました。


「これからの企業法務の話を聴こう」

リーガルテックの導入などを通じて法務業務の効率化を実現した"その先"に、法務部門として何をすべきか、未来に向けて先進的な取り組みを実践されている法務の方に、そのお考えや実践内容についてじっくりお話いただくインタビュー企画です。

これからの企業法務について

国内のビジネス市場縮小とグローバル化

ーー人口減少、少子高齢化、ビジネスのグローバル化が進んでいく中で、日本企業を取り巻く環境は日に日に厳しさを増しています。

藤本和也氏(以下、 藤本):
日本の人口が減少し続けた場合、それに比例して日本のマーケットにおける購買力の総量も減少することになりますが、そのような中で、どの企業も生き残りに必死ですよね。2020年の段階で65歳以上の高齢者が28%以上を占める人口ピラミッドとなっています。今後、ますますこの傾向が強まっていく中で、年金生活で倹約する方が増えてきたら市場に十分な資金が流れていくということは望めなくなるかもしれません。

 国内の購買力が低下していくことを考えたら、日本のマーケットにとどまっていて果たして日本企業は存続できるのかという疑問が当然に出てきます。

 法務部を有しているそれなりの規模の企業であっても国内だけにとどまっていたら生き残るのは難しいでしょう。企業が世界に展開する祭には、法務も世界の優秀な法務人材と競争していくことになります。

ーー法務パーソンにも変化が求められていきますね。

藤本:
おっしゃるとおりです。そもそも国内においても競争ですよね。たとえば、事業が立ちいかなくなって別の国内企業に買収され、合併に至ったとします。法務部は2ついりませんから、買収された側の法務部門は一握りの優秀な人材だけ残されて、残りは「もういいです」ということになるでしょう。

 日本の国内市場が右肩上がりで成長している時代ならば、「これから大丈夫なのか?」という疑問を抱かず安穏と日々を過ごせたわけです。でもそういう時代ではないんですよね。競争しているのはビジネスサイドだけではなく、法務部門においても同様、そういう時代が既に訪れています。

ーー企業のグローバル化が進んでいったとき、法務パーソンにはどのような影響がありますか?

藤本:
私が所属しているChubbグループは世界54ヵ国に展開していますが、各地域に法務部門を有しています。日々の業務の中で特段意識しているわけではないのですが、各国の法務部員のレベル感はグローバルにおいても比較されているんですね。それぞれの国に別々の法務部門があるというよりは、世界にひとつの大きな法務部があるという感覚です。

 そのなかで、どの国の誰に何を任せるのかということは、組織ですから当然考えているわけです。国内に留まっている日本企業であれば、自分の競争相手は隣の席に座っている同僚だけなのかもしれませんが、国内に留まらないのであれば、国籍も言語も文化も違う、他の国の法務人材が競争相手だという時代が既にやってきています。


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時間と距離を超えてますます進むグローバル化

ーー2020年以降は世界的なパンデミックの影響で、Zoomなどを活用したビデオ通話も一般的に普及しました。グローバルにビジネスを展開するにあたって、ハード面での環境も整ってきているように感じます。

藤本:
おっしゃるとおりです。時間と距離の制約がビデオ通話の普及によって非常に少なくなりました。

 中国の法律について知りたいのなら中国の法務部門に、シンガポールのことを聞きたかったらシンガポールの法務部門に、瞬時に話を聞くことができます。経営側も同様に、時間と距離の概念にとらわれることなく、すぐにグローバルレベルで指示を出せるようになっていますので、日本に留まるとしても、もはや国境や国家という考え方はビジネスにおいては意味をなさなくなったと考えておく方がよいと思います。

ーー先ほど、法務パーソンのライバルが隣の席の同僚から世界の法務パーソンに変化しているというお話がありましたが、グローバル化の進展やハード面、ネットワークの進化によって、「日本のことは日本の法務パーソンが担当する」という常識にも変化が訪れる可能性はありますか?

藤本:
現状では、各国の法務パーソンから「日本ではどうなっている?」「日本法ではこれはどうしたらいい?」と日本の弁護士である私のもとに質問が来ますが、もしも、日々の研鑽や勉強を怠って、世界の法務パーソンよりも日本の事情について疎くなるような事態に陥ったら、「別に日本にいるからという理由で彼に頼まなくてもいいな」という判断をされる可能性は十分にあります。

 法律の壁や言語の壁がありますので、すぐにということはないと思いますが、グローバル化がさらに進んでいった場合、課題や問題が解決できるのであれば誰が解決策を提案しても良いわけで、日本企業だから日本人に依頼する必然性はなくなっていくと思います。

ーー日本企業が世界の中でどのように生き残っていくべきか、ということを考えたときに法務パーソンも無関係ではないということですね?

藤本:
企業の法務部で法務パーソンとして生き残っていこうと考えた場合、その母体となる所属企業が存続できなければ法務部で生き残るもなにもありません。

 世界各国の企業をライバルとして市場シェアを拡大していくために自社はどうしようとしているのか、世界の環境の中で自分自身が存在感を発揮していくためにはどうすればよいのか、ということは、ビジネスサイド、法務パーソンといった分類に関わらず、企業に関わる全員が考えていく必要があるのではないかと思います。

 世界を舞台に物事を考えていく、そのような発想を進めていくと、経営陣がなにを考えているのかも見えてくると思います。法務パーソンが企業内で立ち位置を確立し、価値を認めてもらうには、経営陣からの要求に対して期待通りまたはそれ以上のバリューを提供することが必要です。

 その際に、経営陣がなにを考えているのかを正確に把握できていなければ、期待に沿った結果を提示することができません。そういった意味合いにおいても、所属企業のビジネスが発展し、所属企業がマーケットで生き残るために、法務部および自分がなにをすべきなのかを考えることは良いトレーニングになるだろうと思います。

法務パーソンの二極化が進む

ーー国内市場の縮小、グローバル化の進展など、環境の変化に伴って、法務パーソンの二極化が進んでいくように思えます

藤本:
おっしゃるとおりです。所属企業が抱える法的リスクを適切にコントロールするためには、経営と一体となり法務部門が機能していることが必須です。

 そのためには、経営陣の一員として企業の法的リスクコントロール全般を統括するジェネラル・カウンセルという法専門家としての役割が、ポジションの呼び方はともかく、日本にも根付いていくことが重要だと思います。

 そのような人物が法務チームを率いているであれば、経営と一体化して法務部門が機能する状況に近づくと思います。法務部門のメンバーの能力によっては、法的知見をベースとしたビジネスサイドへのコンサルテーションが可能となり、社内のシンクタンクとしての機能も併せ持つ法務部に昇華することが考えられます。

 その一方で、法務部が経営と一体として機能することを可能とする人材が法務部門にいない場合には、経営陣は法務部に対して腹を割って重要な話をしても仕方がないので、いきおい「(契約内容には影響の少ない)契約書の文面審査を何件こなします」「(内容には影響の少ない)形式や言い回しを細かく直します」といった、いわゆる“事務作業主体の法務部”になってしまう危険があります。

 これらの事務作業に関しては、 AI のほうが遙かに優れているという状況が近いうちに到来すると思っています。正確だし、量もこなせるし、人件費と比べても格安です。

 ただ、人間は AI に事務作業レベルでは勝ち目がありませんが、ビジネスにかかる判断や、ビジネススキームに関わる判断、戦略的な思考は人間じゃなければ難しいでしょう。

「この契約書の文言では今後このような紛争に発展して訴訟になるリスクがあります。事前の交渉段階である程度は抑えるけれども、利益を取りにいくならこのへんで手を打っておこう。そのためには契約書もこれくらいの文言にしてみましたが、これくらいのリスクは許容できますかね?」といった内容を、経営サイドと相談して、リスクを取るのか見送るのか、そういう判断をしないといけないんですよね。これは AI ではできませんから。

 そういうことができる法務の人材の必要性は増していくと思います。 AI ができる作業は AI を操作するのが得意な作業部隊がオペレーションを行った方が効率的ですから。

ーーただ作業だけをこなしていく法務パーソンが、自身の存在感を発揮したり高い価値を生み出すのは難しい、ということですね?

藤本:
AI を活用したリーガルテックサービスがより普及した場合でも、AIツールのオペレーターは必要でしょう。システム操作がある程度難しい場合、正しく操作することができる人が必要になります。「有用だが操作が難しいAIツールを操れる」のであれば、この点に希少性が出てくると思います。

法務部門内の効率的な人材配置や役割分担から考えると、そういう人材は必要とされるでしょう。

ーーだけど、そこに法律の知識は必要ない。

藤本:
いらないでしょうね。むしろ中途半端に余計な判断をしないでくれた方がよいということなんでしょうね。そのほうが混乱しなくていい。ただ、AIツールをオペレートする人材については、それほど人数は必要ないでしょう。

 今後、AIツールではまかなえないレベルの高度な法的リスクコントロール能力を有する人材が法務部門において求められてくる中で、希少性も発揮できるAIオペレーティング業務もできないとなると、法務部で活躍するのはなかなか難しいね、ということになっていくんだろうと思います。

後編に続く

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