各種サービス導入時のトラブルや、回避の仕方
GVA assist をはじめ、さまざまなツール・サービスを活用されていますが、全てが問題なく導入できたわけではないですよね?
はい、もちろんです。直近ですと某有名クラウドサービスを導入しようとしたときに手痛い経験をしました。
弊所はそもそも新しい取り組みに対して「とりあえずやってみよう」というスタンスで臨むことから、もちろん某サービスを導入する際もそのスタンスでした。某サービスは多機能高性能なため、導入支援会社を見つけて要件定義を重ねていったのですが、結果として、決して少なくない金額を支払ったものの、某サービスの導入を断念しました。
弊所の独特な顧客サービスが某サービスと相性が良くなかったのか、ベンダーさんに「こうしたい」という希望をさまざまな手法でお伝えしたつもりだったのですが、ベンダーさんと上手くコミュニケーションを取れず、意思疎通が図れなかったことが、導入断念の大きな要因でした。
ちなみにこのときに実現したかったことは、その後知り合った業務改善コンサルタントの方にご相談したところ、弊所が実現したいことをきちんとご理解いただき、別のサービスを2つ組み合わせることで実現可能だと教えていただいたことで、システム化が実現して今にいたっています。
やはり、新システム・サービスの導入は難しいですが、ベンダーさんとコミュニケーションを行い、要件定義をしっかり行うことはとても重要だ、というのがこのときの学びです。
新サービス定着のために必要なこと
新しいサービスは導入しただけではうまく回りません。導入後、実際にそのサービスが定着するために、どのような施策を行っていますか?
新しいサービスは、契約してアカウントを発行したら勝手に定着するものでは当然ありません。弊所で行っていることとしては、
- マニュアルを自分たちでも作成する
- スタッフに向けた導入時のレクチャーを行う
- サービス活用を評価基準に組み込む
の3点です。
導入したてのサービスは、使いかたが組織内で統一されないと情報はあっというまに散逸してしまいます。実際に弊所でも情報が一時「サービスがそもそも使われない」「当初定めたルールとは別の使われ方をする」といった事象によって、バラバラになってしまった時期があったのですが、上記の3点を意識したマネジメントによって解決しています。
新サービスが組織に定着するまでのハードルと、そのハードルをクリアするために実践していることをお教えいただけますか?
新サービスの導入~利活用は、ボトムアップではなくトップダウンで進めないと浸透するのに苦労すると思います。
ただ、トップダウンでサービス導入が行われると、現場からのネガティブな反応はどうしても出てきてしまいます。具体的には
- すでにあるツールやオペレーションを変えることに対するサイレントな抵抗
- 「そもそも面倒」といったネガティブな声
などです。それらへの対処はもちろんマネジメント側の重要なミッションです。具体的には、対話しか対処方法はありません。
現場としては、既存のワークフローに自身の行動を最適化したからこそそれまで回っていたのに、スクラップ&ビルドするのはたしかに大変です。そこで、現状が最適ではなく、課題があることを明確に伝え、新サービスの導入によって、その課題が克服され、業務がどのように最適化されるのか、ということを説明することで、所員全員が新サービスを利用する動機付けを行うことが大切です。
かといって全員が納得しないと前に進めないかというと、そうではありません。新サービス導入によるベネフィットを組織全体で得られると判断したからこその導入なので、最終的には経営判断としてGoサインを下し、以降は定着のために行動することになります。
また、上記の動機付けを補完する意味において、新サービスに基づく新しいルールをしっかりと守ることを評価の対象としています。これは弊所の掲げるバリューのうちの一つである「As a Good Team」に基づく評価になります。まあ、ルールを守るのは基本的なことなんですけどね。
いずれにせよ、新サービス導入の際に重要なことは、新サービスをマネジメント側が率先して活用する、ということと、新サービスをルールに従って利用しない人は逃がさず、粘り強く言い続ける、ということです。この2点は肝に銘じています。
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GVA assist
DX推進とセキュリティ
DX推進とセキュリティの兼ね合いについてはどのようにお考えでしょうか?
一般的に言われていることとそう大差ないかもしれませんが、ロケーションフリー=業務を行う場所を固定されない点は、まさに今回の緊急事態宣言によるリモートワーク対応のときはメリットですね。ほかにも、チーム間での情報共有がスムーズに行えることによるクライアントへのサービス向上など、世間一般でよく言われるシステム導入のメリットは、実際に導入して振り返ってみるとたしかに実感します。
一方で、セキュリティと新サービス導入との線引きは難しいです。
弁護士事務所として、脆弱なセキュリティの状態でサービスを導入・運用してしまい、万が一事故を起こしてしまった場合、社会的責任を強く問われてしまいます。他方、セキュリティを気にしすぎてDX推進を断念し、旧態然のスタイルで業務を続けていったとする場合、直近2~3年はなんとかなるかもしれませんが、5年10年と経つと競争力が低下してしまうのは目に見えています。
したがって、新しいサービスを導入する際には、セキュリティについて抑えるところを抑える一方で、極端に臆病になりすぎないことが必要ではないかと考えます。
まとめ
色々とありがとうございました。最後に一言、この記事をお読みの方にメッセージをお願いします。
DX推進の延長線にリモートワークがある、と考えており、その点においてGVA法律事務所はスタッフやマネジメント側の努力のおかげで現状はソフトランディングできていると思います。とはいえ、これまですべてのDX推進が成功したかというとそんなことはなく、残念ながら失敗もありました。ただし、それらすべての経験の積み重ね自体が事務所の資産であり、変わり続けられる組織文化こそが重要だと考えています。
各社各様のご状況や、同じ社内でも求められている役割によってできる/できないことはあると思いますが、新しいサービスやツールの導入によって、業務の効率化やさまざまなコスト削減を達成することは、組織的な成長だけでなくビジネスパーソン個々人の成長や可能性を広げることにもつながります。
コロナウイルスの影響によって、生活スタイルや企業の在り方について強制的に変化を求められる今こそ、業務の抜本的な効率化にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。一歩踏み出してみると、これまでとは全く異なった景色が広がっていることに気が付くと思います。
話し手
弁護士法人GVA法律事務所
代表弁護士 小名木 俊太郎様
インタビュアー・編集
GVA TECH株式会社
マーケター 小室 吉隆