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下請法:親事業者の禁止事項を学ぶ(前編)

GVA TECHでは、テクノロジーで契約業務に関する課題解決を目指すだけでなく、企業の法務パーソンの方々のお役に立てる情報発信を行っています。その一貫として、企業法務に携わる方々向けのセミナーも随時開催しています。

昨今、当局による下請法の摘発件数が激増しています。下請法は、意図して違反する悪質なケースのみならず、知らないがゆえに一線を越えてしまうことも珍しくありません。当局から「勧告」措置を取られてしまうと、企業名が公表されるなど大きなダメージとなってしまいます。

本セミナーでは、下請法の主要な論点である「親事業者の禁止事項」についてフォーカスして解説します。別日に開催されたセミナー「下請法の基本を学ぶ」のレポートと合わせてご覧ください。

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弁護士法人GVA法律事務所

原田 雅史 弁護士
弁護士法人GVA法律事務所

2016年弁護士登録、2019年GVA法律事務所入所。
企業法務、海外案件を担当。
前職では、東証一部上場メーカーで企業内弁護士として広く法務業務を担当。
下請法については、公正取引委員会による立入調査の対応も経験。


締日と支払日の盲点に注意

親事業者の禁止事項は11項目あります。それぞれ事例と合わせて見てみましょう。

下請法:親事業者の禁止事項1.受領拒否の禁止

親事業者が下請事業者に対して委託した給付の目的物について、下請事業者が納入してきた場合、親事業者は下請事業者に責任がないのに受領を拒んではならない。

趣旨としては、親事業者が委託するものは、親事業者が指定する仕様に基づく特殊なものが多いため、受領拒否すると下請事業者は他社に転売するのも難しく、不利益を被ってしまいます。それを防止するための禁止事項です。

違反となる事例

親事業者であるA社は、自社の生産計画を変更したことを理由として発注の一部を取消、下請事業者の給付を受領しなかった。

下請事業者に責任があれば受領を拒むことができます。その際、2つのケースに限られます。

  1. 注文と異なるもの又は給付に瑕疵等があるものが納入された場合
  2. 指定された納期までに納入されなかったため、そのものが不要になった場合(ただし、無理な納期を指定していた場合は除く)

通常取引と同様に、相手方に瑕疵がある場合はやり直しをさせたり取り消しもできます。ただ、禁止事項としてこのようなことがあるので頭に入れておく必要があります。

下請法:親事業者の禁止事項2.下請代金の支払い遅延の禁止

親事業者は物品等を受領した日から起算して60日以内に定めた支払期日までに下請代金を全額支払わなければならない。

毎年、公正取引委員会、中小企業庁で下請法の実態調査をしており、調査結果を公表しています。令和2年度まで公表されていますが、今日紹介する11の禁止行為の中でもっとも多いのがこの「支払遅延」で全体の約6割を占めています。

受領した日から60日以内の定めた期日に払わないといけないのですが、そもそも支払期日が定められていないケースもあるかもしれません。そういった場合には給付の受領日に支払わなければならないというルールになっています。

また、当事者間で定めた支払期日が受領日から60日を超えていたときは、受領日から60日以内に支払わなければならないとされています。

違反事例

毎月20日締め切り、翌月末日支払という取引条件となっていることもあるかもしれません。このような条件にしていると、支払い遅延になってしまうケースがあるのでご注意ください。

6月21日から7月20日までに納入があるとします。7月20日に締め、翌月末の8月31日の支払いにです。この場合、7月20日に納品されたものについては、41日後の支払いになるので問題はありません。

ところが、6月21日に納入されたものは、8月31日の支払いでは60日を超えてしまいます。ここが支払い遅延に該当する点です。

月末締め、翌月末日払いにしておけば、こういった恐れはありません。締日が末日になっていない場合には気をつけていただき、すべて60日以内に払われているか確認してください。

ポイントが3つあります。

  1. あくまでも検収合格時が起算点ではなく、給付の受領後60日以内に支払わなければならないとなっているので、給付の受領日が起算点になる
  2. 支払期日が金融機関の休業日に当たる場合には、事前に書面により合意することに寄って、支払いの遅延が認められる。
    ⇒取引契約の中で規定されていることが多いでしょう。契約書に書いていない場合は1~2日の遅れになると思いますが、違反になります。立ち入り調査がある場合には指摘を受けてしまい、修正したものを当局に提出するなどが必要になるので、現時点で直せるものは直したほうが良いでしょう。
  3. 下請法の運用上は、「60日以内」の規定は「2か月以内」として運用している。
    ⇒7月と8月は2か月連続で31日まであります。そのため、7月1日に納入されたものを8月31日に払った場合、62日目が経過していることになり、形式的には違反になります。ただし、当局では「60日以内」というのは「2か月以内」という意味合いで運用しているので、2日遅れているものの、下請法の違反はないという運用がなされています。

下請代金を減額できる3つのポイントとは?

下請法:親事業者の禁止事項3.下請代金の減額の禁止

親事業者は、発注時に決定した下請代金を、下請事業者の責に帰すべき理由がないにもかかわらず、発注後に減額してはならない。

下請事業者の立場は弱く、一度代金を決定した後でも、やっぱり下げてくれないかという要請を受けやすいものです。下請事業者としても断るのが難しいため、そのような不利益を受けないようにという趣旨から定められています。

とはいえ、下請事業者の責に帰すべき理由があるときには減額が認められます。具体的には、3つあります。

  1. 瑕疵の存在や納期の遅れなど、下請事業者の責に帰すべき理由があるとして、受領拒否、返品した場合に、その給付に係る下請け代金の額を減じるとき
  2. 下請事業者の責に帰すべき理由があるとして、受領拒否、返品できるのに、そうしないで、親事業者自ら手直しをした場合に、手直しに要した費用を減じるとき
  3. 瑕疵の存在又は納期遅れによる商品価値の低下が明らかな場合に、客観的に相当と認められる額を減じるとき

減額の事例

値引きと称して、下請け代金の額に一定率を乗じて得た額を下請け代金の額から減じた。

下請事業者の責任がないのに減額した場合、減額の名目や方法、金額の多少を問わず、また、発注後いつの時点で減額しても違反行為となるのでご注意ください。

違反事例を見ますと、減額の名目には「値引き」「協賛金」「リベート」などさまざまあります。

また、細かい点では「端数の切り捨て」にも注意してください。1円でも減額したら減額とされます。

さらに細かい話ですが、計算によっては1円未満の数十銭といった1円未満の単位をを切り捨てる場合には減額にはあたりません。1円以上の切り捨てが減額とされます。

代金の減額は、全11項目の禁止行為の中でもっとも「勧告」のリスクが高い項目です。2014年から2017年の勧告件数がそれぞれ4件、7件、7件、9件と公表されていますが、減額が理由で勧告となったケースがそれぞれ2件、6件、6件、9件です。2017年にいたっては9件全部が代金の減額です。

親事業者と下請事業者との間で代金減額について合意があったとしても、違反になります。減額について書面化していたとしても違反行為となるので注意してください。

下請法にはさまざまなタイプの違反行為があります。

3条書面の必要記載事項が欠けていたというのも違反ですが、この違反によって下請事業者がどれくらい被害を被るかというとそれほど大きくありません。

ところが、減額はダイレクトに下請事業者の利益に影響を及ぼすため、当局も重く見ています。

ただ、過去の勧告となった事例を見ると、少ない金額で勧告になったケースは見当たらず、最低でも1千万円の減額があったというケースでないと勧告にはなっていません。たとえば銀行の振込手数料を合意なく下請事業者の負担にするというケース。仮に積み重なったとしても数千円、数万円です。

たしかに下請事業者に不利益を与えていますが、これが理由で勧告になるというのは考えにくいと思います。

下請法:親事業者の禁止事項4.返品の禁止

親事業者は、下請事業者に責任がある場合を除き、下請事業者から納入された物品等を受領後に返品してはならない。

受領拒否と趣旨は同じです。親事業者用にカスタマイズしたものを他に転売するのは難しいので、下請事業者にとって不利益になるためにそれを防ぐということです。

違反事例

親事業者であるA社が販売先から発注の取消があったことを理由に、下請事業者の給付を受領した後に返品した。

下請事業者に責任がある場合には返品できるということなのですが、具体的には

  • 注文と異なる物品が納入された場合
  • 下請事業者の給付に瑕疵がある場合

です。

こういった場合には返品できるのですが、期間が決まっています。

  • ただちに発見できる瑕疵の場合→発見次第速やかに返品しなければならない
  • ただちに発見できない瑕疵の場合→物品の受領後6か月以内に返品しなければならない

ここでは、返品できるケースと、できる場合の返品可能な期間の2つについて抑えてください。


(後編へ続く)

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