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今後の士業のあり方とテクノロジーとの付き合い方(前編)

GVA TECH株式会社では、テクノロジーで契約業務に関する課題の解決を目指すだけでなく、弁護士の先生方へお役に立つような情報発信を行っています。その一貫として、弁護士の先生向けに、業務効率化や顧問獲得に関するセミナーも開催しています。

今回は、弊社代表取締役でありGVA法律事務所の代表弁護士も務める山本 俊による書籍『人工知能とこれからの仕事』の出版記念として「今後の士業のあり方と、テクノロジーとの付き合い方」と題したオンラインセミナーを開催。

ゲストに、多くの士業に向けたコンサルティングを通じて士業のあり方を見据え続けている、株式会社船井総合研究所 士業支援部 シニアエキスパート 鈴木 圭介氏をお迎えし、対話を通じて「士業のこれから」について議論を深めました。


鈴木 圭介 氏
株式会社船井総合研究所 価値向上本部 アカウントパートナー室 シニアコンサルタント

東証一部上場国内最大規模のコンサルティングファーム船井総合研究所に所属。同社法律業界向けのコンサルティング部門責任者。実務に精通した提案は弁護士会からも評価されており、第19回弁護士業務改革シンポジウムパネリスト、全期旬和会主催「Professional Lawyers Japan 2019」等の講演実績がある。法律事務所におけるDX及びLegalTech分野に精通しており、既存業務の生産性の向上と共に弁護士の新しい活躍の場の創出に尽力している。主な著書・共著として、『新訂版 弁護士のためのマーケティングマニュアルII分野別実践編』第一法規株式会社、『改訂版法律家のためのWEBマーケティングマニュアル』第一法規株式会社、『士業の業績革新マニュアル』ダイヤモンド社等多数。


山本 俊
GVA法律事務所 代表弁護士
GVA TECH株式会社 代表取締役

鳥飼総合法律事務所を経て、2012年にGVA法律事務所を設立。スタートアップ向けの法律事務所として、創業時のマネーフォワードやアカツキなどを顧問弁護士としてサポート。50名を超える法律事務所となり、全国法律事務所ランキングで49位となる。2017年1月にGVA TECH株式会社を創業。リーガルテックサービス「GVA(ジーヴァ)」シリーズの提供を通じ、企業理念である「法務格差を解消する」の実現を目指す。


AIで弁護士の仕事はどうなるのか?

山本:
もともと2016年にGVA TECHを立ち上げた ときは、「AIが弁護士の仕事をどこまでできるのか?」の境目を探ることが目的のひとつでした。当時の僕は、契約書を入力すれば弁護士くらいのアウトプットが出てくると勝手に思っていたんですが(笑)、当時の技術レベルでは到底不可能だったんですよね。

ここ5年ほどでようやく、契約書のリスクをそこそこ指摘できるくらいにはなりましたが、それでも交通事故や離婚など、弁護士には契約書以外の仕事も多いなかで、まだまだ代替できる仕事は一部分にとどまっています。

鈴木さんはここ数年のAIの影響をどう捉えられていますか?

鈴木圭介氏(以下、鈴木):
僕もAIの知識がまったくなかったときは、映画に出てくるAIに近いイメージを持っていましたね。少し教えたらアソシエイトくらいのアウトプットは出てくるのだろうなと。

AIの得意不得意で言うと、過去の蓄積から特定のデューデリジェンスの妥当性を出すなど、過去のデータから妥当性を出す業務は、ほかにも活かせる余地があると思っています。あとは計算系ですね。損害賠償の計算などはこれまで人力でしたが、AIが業務の補助として活用できれば自動化されていくと思います。

ピンポイントな箇所にAIが使われていくようになると、雑多な業務が減ることで、士業の方々がよりクリエイティブな業務に集中できるようになるかもしれませんね。

山本:
そうですね。すべての問題をAIで解決するのは厳しいという感覚は僕にもあります。一方で、テクノロジーを活用して業務時間を大幅に削減し、クリエイティブな仕事をしようという考え方は、僕が弁護士になって10数年経ちますが、昔から言われていることでもあります。

鈴木:
確かにずっと言われていますが、変える必要もなかった、というのが経営的な現実だと思います。ファーストペンギンとして新たな業務にチャレンジしてもなかなか採算が取れず、既存の裁判や契約書チェックなどの業務のほうが採算性が良かったのではないかと思います。ですが今後は、弁護士の業務はさらに効率化が求めらると思いますね。


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クリエイティブな仕事とは?

山本:
弁護士にとっての「クリエイティブな仕事」というテーマですが、鈴木さんは実際に思い浮かぶ具体例はありますか?

鈴木:
やはりルールメイキングの領域でしょうか。ファジーなものとファジーなものの組み合わせで答えを出す取り組みは非常にクリエイティブだなと感じます。

あとは、何か新しい概念を想像したり、新しいビジネスを考えたりなどでしょうかね。いまは弁護士業務にとっての「問題」は少なくなってきていて、「こうなったらいいよね」という「課題」を見つける時代になってくるのだと思います。

山本:
そうですね。あとは、日常的な業務でも、忙しくてもう一歩踏み込めないことってありますよね。もう少し時間に余裕があって、もう少しちゃんとヒアリングできれば、たとえば契約書にもビジネスリスクを排除する条項を入れたり、ビジネス的に有利な条件を入れられたり。時間さえあれば…とは思うシーンは多いです。

一般民事の領域ではいかがでしょう?

鈴木:
一般民事だと、時間がなくて依頼者とじっくり話せないことを気にしている先生は多いです。交通事故などは良い悪いがはっきりしているケースが多いですが、家事事件などは感情の世界で、何が正しいのかわからないケースもあります。

そういった状況で、利益だけではないところも含めて、何がベストなのか弁護士として依頼者にそったケアができることが大事ですよね。

たとえば、依頼者の心のケアを中心にやられている先生の例で、相続の際、特定の資産について、過去の手紙のやりとりなどから、「この資産は相続したい人のあなたへの大切な思いがあるから、あなたには多めに渡しますよ」ということを、メッセージを付けて相続先の方に伝えた結果、非常に感動して涙を流して喜ばれた、と言ったケースがあります。

依頼者を感動させる、という意味では、弁護士としてもまだまだ領域があるのかなと。

山本:
人の心を動かして紛争解決をしていく。まさに、時間が生み出されるとそのあたりが強化されていく気がしますね。

未来を創る仕事はどうすればできるか?

山本:
予防法務よりももっと進んだ業務だと思いますが、士業がコンサルをやるべきだという話も、15年くらい前から言われていますよね。ひとつの要因としては、この10年くらいは社会全体が景気が良かったので、士業も右肩上がりの業績のところが多く、忙しい本業をやっていれば十分だった。

しかし、景気が減退している現在、テクノロジーを使うことで時間をかなり圧縮できるなかで、いよいよ弁護士もコンサルティングをやるべきフェーズに入っていると僕は思うんですが、なかなか一歩踏み出せないというか、どうしたらできるようになる鈴木さんはお考えでしょう?

鈴木:
私も無資格からコンサル業を始めた身ですし、たとえば経営者の息子みたいな、肩書を持たないメンバーでもコンサルティングが成立しているので、弁護士の先生ならばできないことはないと思います。コンサルはサービスがファジーな部分もあるので、どこでサービス化するか?が重要になりますね。

山本:
少なくとも業種を区切らないと、最初の一歩を踏み出せないと思います。業界理解がないとまったく的外れなアドバイスをしてしまうことになりますし。

鈴木:
はい。あとは業種もそうですが、コンサルには“業種の軸”と“テーマの軸”“があると思っています。テーマはたとえば、財務、人事、組織戦略、DX、BPRなどが今はホットな領域でしょうか。

山本:
なるほど。たとえば社労士がコンサルをやるなら人事コンサルがいいと思いますし、行政書士は許認可などをやっていれば縦に展開できたりしそうで、そこらへんの相性ってありそうですね。

鈴木:
現在、企業から弊社への問い合わせが多いのは新規事業です。特に、BtoB企業の越境ECの相談は多いですね。新型コロナの影響で、日本でものが売れなくなったので、海外に売りたい、けれどその方法がわからない、と。

この領域に詳しい先生は、国の業法などの観点から、どの国に行ったほうがいいなどのアドバイスを領域を超えてすでに着手されている印象です。ほかにも会社内のプロジェクトマネジメント代行をされている先生もいますね。

総じてコンサルタントは、クライアントがやろうとしている何かを後押しする存在になるというのが大事です。士業は社外にいるケースが多いですが、より企業の中に入りこむ、というのがコンサルに近い発想ですかね。

山本:
法務など一部の業務を外部としてやるより、企業全体を見て実行まで責任を持ってやる、ということですね。

鈴木
はい。たとえば今って、人事のプロが圧倒的に不足しているんです。コンサルの例になりますが、時間で労働を制限するとコンサルタントが育たない、という課題感があるんです。「土日に売れているお店に行って情報収集するのは業務と言えるのか?」を気にしていたらコンサルタントとして一流にはなれない、みたいな考え方があるわけです。

このような課題感に対して、では労務的にはどうなのか?人事戦略的にはどうなのか?など両方を理解してアドバイスできる人材はなかなかいません。

法律は重要ですが、守った結果会社が成長しないと意味がないですし、そのあたりを企業にアドバイスできる士業になると、未来の仕事につながっている気がしますね。


(後編に続く)

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