GVA TECHでは、テクノロジーで契約業務に関する課題解決を目指すだけでなく、企業の法務パーソンの方々のお役に立てる情報発信を行っています。その一貫として、企業法務に携わる方々向けのセミナーも随時開催しています。
今回は、契約審査業務を徹底整理!
いかに業務効率化を図れば良いのか、契約審査システムが行うべき業務と人間が適している業務に切り分けて解説します。最新のテクノロジーを導入する際に、どのように活用すればもっとも効果を発揮するのでしょうか。
本まとめは前後編でセミナーをレポートいたします。
仲沢 勇人
GVA TECH株式会社 リーガル部門統括マネージャー
弁護士法人GVA法律事務所 弁護士/リードアソシエイト
一橋大学法科大学院卒業後、司法試験合格を経てGVA法律事務所に入所。2018年頃よりGVA TECH株式会社に参画。2020年よりGVA TECH株式会社のリーガル部門統括マネジャーに就任。顧客に対するサービス導入コンサルティングとリーガルコンテンツの監修業務などを行う。
目次
契約審査業務を徹底解剖
本セミナーは、次の3つを学ぶために企画されました。
- 契約書のレビュー業務において、どのような課題があるのか
- 抽出された課題のうちテクノロジーで解決可能なものはなにか
- 最終的にツールを用いて審査業務の負担を軽くするためのアイデアを得る
契約審査業務とはなにか
まずは前提として、契約審査業務のゴールはどこか、解説されました。
契約審査とは、これから行う取引が、この契約内容・ルールで良いのかを洗い出し、必要に合わせて契約書を修正する作業と定義できます。自社の理想の取引である自社雛形の契約書とこれから締結する契約書との間にある差分を明確にし、差分を修正して埋めていくと言い換えることもできます。
結果、自社にとって有益な契約、取引を成立させていくためのプロセスです。この作業を行うために、法務パーソンが法務知識や個別取引における思考力・想像力を活用して、差分を浮き彫りにして直していく、これが契約審査のゴールです。
契約業務の全体像
契約業務には取引の発生から締結した契約書の管理まで、一連の流れがあります。本セミナーのテーマは「契約審査・作成」ですので、ここにスコープします。
- 先方にて自社雛形ベースでドラフト作成する
- 先方からドラフトが来たらそのレビュー依頼が事業部から来る
- 事業部からヒアリングして取引内容を把握する
- 自社の理想を組み立てて差分を埋めていく
- 交渉する(基本的には事業部など)
- 契約審査の主な流れはこのような形と言えるでしょう。
法務パーソン側から見た流れは次のようになります。
- 取引内容を把握して理想の取引を定義する
- 情報を法務の観点から整理する
- 取引内容を誰が読んでも理解できるよう取引を言語化する
- 契約書と理想との差分を洗い出し、論点を特定する
- 譲歩する・しないも含めてどう修正するかを明確にして契約書上で表現する
- 書面の体裁を整えて仕上げる
これが契約審査業務の全体像です。
契約審査業務の改善
これら、契約審査業務を改善するポイントも3つに整理できます。
1.論点の見落としをなくす
リスクの抜け漏れを防止し、審査にかける時間を増やさずにレビュー精度を向上させる。
2.取引の個別事情に左右されない作業を効率化させる(工数・リスクの削減)
人間がやるべき個別事情を考慮した検討・判断以外の、契約書自体や文案の作成、ケアレスミスのチェックや手間のかかる作業をどれだけスムーズに行えるか。
3.属人化の解消・スキルの平準化を行い、組織として良い法務を実現する
規模の大きい企業、法務チームでは、属人化の解消やスキルの平準化が必須。
時間と手間を極力かけることなく、会社視点でリスクコントロールが効いている状態に法務チームを持っていくことが求められます。
個人で「仕事がデキる法務」の方はたくさんいるでしょう。しかし、彼らに先方案の同じ契約書をレビュー依頼しても、手を入れる箇所も違えば、アウトプットとして出てくる条文の修正案も異なります。
そのような状態では、会社として契約リスクのコントロールができているとは言えません。個々人の法務パーソンに依存している状態なので、会社視点でのリスクコントロールが必要となります。
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システムは「定形パターン」/人間は「固有パターン」
審査業務におけるテクノロジーと人間の役割分担
契約審査業務の一連のフローを定義した上で、法務パーソンと契約審査ツールとの間で、どのように業務を切り分ければ良いのか、解説がなされました。
対象条項
契約審査システムは、定型パターンに当てはまった修正作業が得意分野です。しかし、システムは個別の事情を考慮できません。つまり、現実の世界でどのような取引をするのかは考慮できないため、個別のビジネス条項や取引固有の事実関係をもとに、どのようなレビュー論点を抽出してどう修正するかの検討・判断は法務パーソンにしかできません。
受け持つ業務の性質
契約審査システムの得意分野はあくまで「作業寄り」です。それに対して法務パーソンは、現実の取引を考慮した上での検討・判断を行えます。定型的なもの、パターン化したものはシステム。個別対応は法務パーソンが手掛けると良いでしょう。
役割分担
システムはパターン処理やデータ参照のスピードを上げたり、参考になる情報を持ってくるといった点に特化していきます。一方、法務パーソンは取引ベースの検討・助言・判断する力が求められます。
次に検討されたのは、契約審査業務を行う際、法務パーソンが抱える課題です。作業別に挙げられました。
契約審査における法務の課題(情報の整理)
法務として理想的な取引のあり方を定義する際の課題として、次のような点が挙げられます。
- 事業部から法務に情報が来るが、担当によって情報に濃淡がある
- 一定の経験がないと理想的な契約のあり方を定義しづらい
- 取引内容を契約類型に落とし込む検討の難易度が高い(特に新規事業)
- 事業部から来る類似の問い合わせに毎回回答することが求められる
これらはツールによる解決は難しいとのこと。改善するためには、
- 事業部への研修
- コミュニケーション方法の改善
- ヒアリング事項のルール策定
などが挙げられ、型化はできるが、まだ解決が難しい領域といえるでしょう。
そのなかで1点、事業部から来る類似の問い合わせに毎回回答しないといけないという課題については、ナレッジをデータ化して契約審査システムに格納することである程度の解決はできるでしょう。
契約書を作る
個別具体的な取引を契約書として言語化する際の課題には次のようなものがあります。
- たたき台(適した雛形、過去案件)の有無で所要時間が大きく変わる
- 契約書本の「写経」が必要な場面がある
この2点は、契約審査システムでサポートできます。
- システムに搭載されている契約書の雛形/条項案を元に作ることで効率化が可能
- 非定型契約は(特殊な取引全体をというのは難しいが)、過去のナレッジやシステムにプリセットされている契約書の雛形の活用によって工数削減を図る
契約書を読む
理想との差分を洗い出し、リスクを特定する際の課題です。
- 経験が不足しており「できない」
- できるけれども時間がかかる
- できるけれども集中力が切れる
- できるけれどもこの類型は初めて。なおかつ頻繁に使われる契約類型でもない
法務部に来て間もない経験が浅いスタッフは、リスクのあたりを付けるのにも一苦労です。また、見落としをなくそうと注力すると必要以上に契約書を読み、修正点を洗い出す作業自体に時間がかかってしまいます。また、十分な実績のあるスタッフでも、一日の終わりになれば集中力も切れ、思わぬ見落としも発生する可能性が高まります。
この原因による抜け漏れ防止を図るためには、契約審査システムは最適です。AIによる照合で見落としを抑止し、レビュー時の論点漏れを防止できます。
契約書を直す
譲歩できない、絶対実現したい点を明確にし、契約書上で表現する際の課題です。
- 問題があるのは分かるが、どう直すべきかが分からない
- この類型は初めてでどんな問題があり得るのかが分からない
- どんな方向性に直すかは分かるが、適切な表現に落とし込むのに苦労する
- 法改正等のリサーチに割ける時間がない
- 対案作成の時間が掛かる
- 適切な譲歩案、落とし所の引き出しがなく、的確に表現するのに時間が掛かる
- 顧問弁護士からの返信が遅く、待ち時間やコストが掛かる
これらの課題に対して契約審査システムはどのような貢献ができるのでしょうか。
- 自社雛形の条文や修正例を参照しながら部分的にコピー&ペーストして直すことで修正が簡単に行えます。
- システムに過去の契約書を蓄積することで、過去に自社で手掛けた条文を簡単に参照できるようになります。
- ベンダー提供の推奨条文や譲歩案の条文例、解説を自由に参照できます。
- どのベンダーも法改正に合わせて収録している契約書の内容を修正しています。
以上が契約書を直す、修正する、差分を埋めるところの課題のチェックリストと採用するツールの解決策です。
契約書を仕上げる
最後は契約書を仕上げる段階での検討です。
- 条番号ずれや表記揺れなどの確認作業に時間がかかる
- 目視・手作業では時間が掛かる
目視での確認・修正ではケアレスミスも発生しやすくなります。ワンクリックでケアレスミスを修正できる契約審査システムを活用するのが最適です。
(後編へ続く)