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第1世代に聞く 日本のジェネラル・カウンセルの「現在地」(前編)

日清食品ホールディングス株式会社(東京都新宿区)で執行役員・CLOを務める本間正浩氏は、日本のジェネラル・カウンセルの第1世代のひとりとして知られている。最高幹部の一人として経営に直接影響を及ぼすジェネラル・カウンセル。法務パーソンのキャリアプランの最頂点と言っていいその場所から見える景色とはどのようなものなのか。そして今後、ジェネラル・カウンセルを目指す第2世代に、なにを期待しているのか。

日本経済界におけるジェネラル・カウンセルの現在地とこれからについて、お話を伺いました。

「これからの企業法務の話を聴こう」

リーガルテックの導入などを通じて法務業務の効率化を実現した"その先"に、法務部門として何をすべきか、未来に向けて先進的な取り組みを実践されている法務の方に、そのお考えや実践内容についてじっくりお話いただくインタビュー企画です。

これからの企業法務について

日清食品ホールディングス株式会社
CLO・執行役員、ジェネラル・カウンセル
本間 正浩先生

ジェネラル・カウンセルに至る道は「まだない」

ーー単刀直入にお伺いするのですが、現在法務の現場で活躍されている若手の方々が「ジェネラル・カウンセル」になりたいと考えたときに、どのようにキャリアアップしていけばよいのでしょうか?

本間正浩先生(以下、本間):
正直に申し上げると、日本でジェネラル・カウンセルあるいはCLOと言ってもいいのですが、それ自体が本当に存在しているのか分からないのが現実なんですよね。

外資系の企業にはそれなりにいるのですが、僕の友人のある方が、日本の上場企業にジェネラル・カウンセルまたはCLOという肩書を持っている人が何人いるのか調べたところ、20人かそこらなんですよ。

しかも、肩書を持っているからといって、真のジェネラル・カウンセルとしての活動をしているのかどうかも定かではないわけです。もちろん、逆に肩書がそうなっていなくとも実質的にジェネラル・カウンセルとして活躍している方々もおられるでしょう。

そう考えると、「ジェネラル・カウンセルになるためには」と言っても、そのような立場があるのか、さらにはそこに至る道がそもそもあるのか、というのが現実なんですよ。

ーー企業あるいは経営者がジェネラル・カウンセルの重要性を認識していない、ということですか?

本間:
企業自体が「ジェネラル・カウンセル」の存在にどこまで気がついているのか、という疑念があるんですよね。

ただ、5年前に比べたら、日系企業でも私を含めて増えているのは間違いないんです。それでもまだ、海外と比べると日本はまだまだジェネラル・カウンセル自体が未発達と言えるでしょう。まして、そこに至るまでのルートとなるとよく分からない、まだない、というのが現状ですね。

あるジェネラル・カウンセルの例なのですが、その方は海外の法律事務所でパートナーを務めて、某日系大企業にスカウトされました。後に執行役員に就き、ジェネラル・カウンセルとして法務の責任者を務めたのちに、海外支社のトップに就任しています。

じゃあ、その方の後任に、似たようなキャリアを持った法務のプロフェッショナルが就いたかというと、そうではなかったんです。経営企画系の方が後任に就きました。つまり、ジェネラル・カウンセルの機能や役割が評価されていたというよりも、その方個人の能力が評価され、その地位に就いていたということなんです。

当社でも、現在はたまたま本間正浩がジェネラル・カウンセルとして籍を置いていますけれども、私の後任がどうなるかというとよく分からない。私のプロフェッショナルとしてのひとつの目標は、当社に2代目のCLOを作ることなんですけどね、この会社に。

ーー個人の能力と評価に依存しているのが現状、ということですね。

本間:
そうだと思います。ただでさえジェネラル・カウンセルの数が少ないなかで、そういうポジションをそれとして作ったという会社はもっと少ないと思うんですね。

どの会社も、ジェネラル・カウンセルはまだ1代目でしょう。2代目を作った人はほとんどいないと思います。まだそういう状況なので、現実の問題として、これからどうなっていくかと言われてもよく分からないんですよね。

ーー他の企業はご存知ありませんか?

本間:
そうですね、ある外資系企業ですが、企業内弁護士採用のパイオニアとして、何十年にもわたって、法務部門に新卒の弁護士を採用し続けている会社があります。数十年となると、累積で大量の人員が入社していることになるのですが、そのなかで、ジェネラル・カウンセルに就任した人物が何人いるのかお分かりになりますか?

ゼロなんです。ひとりもいない。その企業では、ジェネラル・カウンセルは外からベテランの弁護士を採って据えるんです。それがまだ現状なんですね。

ただ、これから企業のニーズは増えていくとは思います。これは間違いない。

日本企業は横並びですから、日本全国で30人、50人、あるいは100人、具体的な数は分かりませんが、クリティカルマス(※普及が爆発的に跳ね上がる分岐点)がどこかにあると思っています。そこに至ると一気に増えると思っています。

日清食品ホールディングス株式会社
CLO・執行役員、ジェネラル・カウンセル
本間 正浩先生

海外のGCたちと交わされた「議論」

ーー本間先生は海外のジェネラル・カウンセルとも緊密に連携を取っていらっしゃいます。海外のジェネラル・カウンセルとは、どのような議論が交わされているのでしょうか。

本間:
先日、我が国のジェネラル・カウンセルが集まって行われる会合が開かれました。そこでも「どうやってジェネラル・カウンセルを増やしていくのか」が話題になりました。

ジェネラル・カウンセルという存在があるんだと認知してもらう先の対象は、たぶん既存の法務職の方々ではないと思っています。むしろ、経営陣とかね、ビジネス側の人たちに売りこんでいかないと増えないよねという話になったんです。

ジェネラル・カウンセルは、間違いなく企業や経営者にとって有益な存在ではあるんだけど、社内にそれだけのポジションを作るとなるとお金もかかるし、人事制度上の整合性も考えなければならない。それだけの覚悟や決意を持った経営者をどれだけ増やせるか、が課題のひとつでしょうね。

もうひとつ、その会合で話題になったのは、ジェネラル・カウンセルへの道なんです。少なくとも現在は、法務部員として入社して法務部長に出世した、その先の終着点にジェネラル・カウンセルがあるわけではないんじゃないか、と。

ーー出世やキャリアプランというと、すごろくのように一コマずつ進んだ先にポジションがあるイメージですが、ジェネラル・カウンセルはそうではないということですね?

本間:
ではないかと思うんです。経験を積んだ法務部員や法務部長から、ジェネラル・カウンセルになるには、どこかで質的な転換や飛躍があるんじゃないか、必要なんじゃないかという話が出てきたんですね。

私も自分でしばしば思うのですが、自分がやっているのは法務なのかなって。必ずしも法務じゃないですもんね、やっていることや考えることが。キャリア自体は法務から出発していますけれども、判断したり、社長に提言したり提案したり、ビジネスにアドバイスしたりする内容のファクターのうち、法務の要素は半分ですよ。

ーー残りはビジネス?

本間:
ビジネスの内容ですね。

本当は自分の実体験をお話できれば分かりやすいのですが、さすがにそれはできないので、ロースクールで講義をするときなどに使う設例でお話しします。

クレジット・カード会社があったとしましょう。そのオペレーションを担うコンピュータシステムを提供していた会社が突然倒産したとします。急遽別の会社のシステムに乗り換えることになったのですが、その際何千万件ものデータ移行をする必要が出てきました。

その際に、システムとオペレーション、それに営業のヘッドが担当している法務部員とともにジェネラル・カウンセルのところにきた。データ移行が「冬の一回払い」時期にもろにぶつかると。このままだと、誤請求の山を築くことになりますと。

契約書を読み直すと、どう読み込んでも「冬の一回払い」を拒絶することは許されない内容になっているとしましょう。受けないと契約違反ですよね。

法務としてどうすればいいのか。「一回払いを受ける義務があります」というのではビジネス側に対する答えになっていません。もしそれでいくのであれば、「誤請求の山は甘受しなければならない」と言わないといけない。

そういう答えはできないということで、担当法務部員が外の弁護士とも相談して、これだったらと考え出したのが、契約書には冬の一回払いを受けなければならないとは書いてあるけど、その支払い時期については「冬」という以上のことは書いていない。だから、本来なら例えば12月26日の支払いのところ、1ヵ月早めて11月26日に決済して引き落とす。

契約書の解釈からすれば、これでギリギリなんとかなると。外部弁護士もそれであれば意見書が書けると言います。システム担当者も、そうしてくれれば誤計算は避けられるというわけです。

じゃあそれでやるのか。それでよいのか。

1ヵ月前に、たまたま口座にお金が入っていたから、引き落としがされました。しかし、その翌日に住宅ローンの支払いがあって落とせなかったらどうなるでしょう。生命保険の保険料の支払いができなくて失効してしまった。もう取り返しがつかないことになります。

しかし、それでは、意図的に契約違反をやるのか。

この設例に「正解」はありません。しかし、それがなんであれ、会社は何らかの判断をして対応をしなければならないんです。ということは、ジェネラル・カウンセルが決めなければならない。

さて、今のファクターの中で法律問題はいくつありますか? ということなんです。コントロールファクターはビジネスであって、リーガルではないんですよね。ジェネラル・カウンセルとはそういう仕事なんですよ。

ーー立場が上がっていくとリーガルの割合が減っていくということですか?

本間:
減っていくわけではないんですよね。リーガルはリーガルでずっとあって、その面積は維持した上で、ビジネスなどリーガル以外のファクターが増えていくんです。

リーガルは間違いなく入るんだけど、プラスアルファの要素がより増えてくる。その判断をしなきゃいけないというのが、今の仕事ですよね。

日清食品ホールディングス株式会社
CLO・執行役員、ジェネラル・カウンセル
本間 正浩先生

GCに求め要素は「決断力」と「度胸」、「ビジネスに溶け込む力」

ーー法律の専門家であり、ビジネス面でも結果を出すのがジェネラル・カウンセル。これは企業にとっても非常に有益な存在だと思います。数を増やしていく、第2世代を育成する、これらが喫緊の課題と言えそうです。

本間:
私も来年60歳になります。私にできることは自分の後継者を育てることなんですね。僕の課題は、日清食品ホールディングスの2代目のCLOを作ることなんです。

当社はとても厳しいですから、単に私の次だからという理由で役員にはしないと思うんですね。それだけできる人間がいないと認めてくれない思うんです。それを外から見つけてくるのか、今のスタッフの中からトレーニングできるのか、私の持ち時間が何年あるのかという勝負になっているのが現実ですよね。

ーー第2世代には、どのような資質を求めますか?

本間:
技術的な意味で素晴らしい人は山のようにいると思うんですね。

まず重要なのは、私に本当にあるの? というのはさておき、ビジネスを理解できる感覚ですよね。そしてなによりも決断できる力。クソ度胸も含めてね。この2つですかね。

付け加えるなら、ビジネスに自分を溶け込んでいかせる能力も必要ですね。これは芸風があるので人によってやり方は違うんですけど。

自慢話に聞こえたら許してほしいのですが、ビジネス側の面々が、よく私たちのチームを評して「弁護士に見えない」と言うんです。これは最高の褒め言葉だと思っています。

ビジネスの中で、流れに流されず、かつケンカしない。これってやっぱりすごい大切な能力ですよ。

ーー日清食品ホールディングスさんの法務部のメンバーは、ほとんどが弁護士だと伺いました。

本間 2人弁護士非資格者がいますけどね。あとは全員弁護士です。

ーー弁護士を採用する際、印象的なエピソードはありますか?

本間:
候補者はやはり2つに分かれるんですよね、弁護士の中でも。ひとつのパターンは、この人、ビジネス側の言うことを全部聞いちゃうなという人。もうひとつは弁護士センセイから逃れられない、全部ノーと言ってしまう。だいたいこのどちらかなんです。1時間も話せばよく分かる。どちらも会社では使えない。

運良く、厳しい面接をクリアして採用したメンバーはみんな活躍してくれているのでうれしいですね。

ーー育成面で難しいところはどこですか?

本間:
立場が人を作る、という面がありますから難しいのですが、私が責任を取ってこうしますと言い切れる人を育てるのは難しいですよね。

そもそも、私自身がそれをやらせるのが怖いというのもありますしね。その上で、最終的に「私はこう思います」と、社長の前で言い切れるだけの力量というか迫力というか、そこを育てるのは難しいですよ。

ーーそのためにはビジネスに精通するのも、法律について詳しいことも当然求められる。

本間:
最後は勘なんですけどね(笑)。分かんないから。結果オーライなんですよ。僕も明日失敗してクビを切られているかもしれませんよ(笑)。たまたま、これまでの20年間大きなミスをしなかったというだけかもしれません。

重要なところで、私が責任を取りますと言えるかどうか。「私の責任でこう判断します」と言えるかどうかじゃないですか。

現在でもそうだし、以前勤めていた企業でもそうしていたのですが、法務として法律事務所から意見を取りますよね。その際に、「法律事務所はこう言っています」という言い方を私はしないようにしています。あくまで「私はこう考えます」と言う。

法律事務所は私たち法務部の頭脳の延長なんだけど、私が判断したということは強調していかないと、人に任せている、あるいは人の頭で考えている、極端にいうと責任逃れしているということになってしまう。

私はあくまで「自分はこう考えます」と言う。もちろん、外の専門家と相談した結果…という言い方をすることはありますけどね。

経営陣に対するプレゼンで、A法律事務所、B法律事務所、C法律事務所と並べてマトリックスを作って、A事務所は○、B事務所は△、C事務所は○〜とやっているのを見たことがありますが、私はやらない。「法律事務所へのヒアリングの結果、多数決でこっち」というようなプレゼンはしないようにしています。

※後編に続く

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