矢崎総業株式会社 コーポレートガバナンス・法務室 法務・契約部 契約実務支援チーム リーダー 佐藤 弘隆様に、GVA assist の導入背景や目的を伺いました。
貴社の業務内容をお教えください。
当社を含む、矢崎グループは、単に物を製造するだけに留まらず、製品の企画、原材料の研究開発から製造、販売、アフターメンテナンスまでをトータルに行っており、「クルマをつなぐ」、「くらしをつなぐ」、「社会をつなぐ」という3つの観点から、様々な事業を行っている会社です。
例えば、「クルマをつなぐ」という観点からは、クルマの神経や血管とも言われるワイヤーハーネス(自動車用組電線)を核として、メーター、セーフティ・エコドライブを支援するドライブレコーダーやタコグラフ、電気自動車などに欠かせない充電コネクタなど、カー・エレクトロニクスを支える多種多様な製品を、海外の拠点と協力して、世界各国に提供しています。
他、「くらしをつなぐ」という観点からは電気・ガス・太陽熱などを基本とする多様なエネルギーを最適活用できる製品やサービスを提供しており、「社会をつなぐ」という観点からは地域社会への貢献など社会から必要とされる事業として、高齢化社会に対応した介護事業などを行っています。また、最近ではAI、ビッグデータなどの先端技術を用いた新しい事業にも挑戦しています。
現在の法務部門の体制や、ご対応されている業務をお教えください。
法務部門は、コンプライアンス業務と契約業務に分かれており、その内、契約審査に関する業務は10名ほどで対応しております。契約審査では、担当者が審査し、上司の承認を得る2段階体制をとっており、法務経験がまだ浅い担当者には先輩がフォローする体制としています。
審査に関して、具体的には、国内外の取引先と日本の矢崎グループが締結する契約書の審査やドラフトを実施し、必要に応じて事業部と取引スキームを検討することもあります。
取り扱う事業の範囲が広いことから、契約審査のボリュームは多く、月間で3桁くらいの依頼が寄せられます。その類型は、研究開発に関わる秘密保持や研究開発の委託から、試作品の製造、汎用品の購入や製造委託、販売に関する契約が多くを占めますが、一方で、数は少ないまでも、合弁事業を始めとする各種提携契約や、昨今の社会課題を解決するために弊社で取り組んでいる先端技術(AI、ビッグデータなど)を活用した社会実証試験などの契約も増えてきており、それらは一件あたりにかける時間が相対的に長くなります。
GVA assist を導入するに至った、法務としての課題感をお教えください。
まず前提として、多種多様な事業領域と製品群を長期かつ安定的にお客様に提供し続けるためには、自社の利益だけを追求するのでなく、長期的な視野で自社とお客様の役割や責任を明確にし、それぞれの役割を誠実に果たすことが求められます。
そこにおいて、法務部門としては、単に法的なリスクだけを指摘するのではなく、自社の製品や事業に関する知識はもちろんのこと、お客様を始めとするステークスホルダーとの信頼を逸することの無いよう、これまでの関係や経緯を踏まえたアドバイスや支援が求められます。
これらを達成するためには、個人の感覚に頼るのではなく、自社の審査ノウハウを言語化して共有し、組織としての取組みが必要であると考えました。
新旧それぞれの事業領域において、様々な契約スキームや法改正が日々発生していますが、契約交渉においては、これらの知識を前提としてコミュニケーションが行われますので、各法務担当者は自らの知識を日々アップデートしていくことを求められます。
弁護士や外部専門機関の書籍やレポート等も入手・分析していますが、人間の記憶力や注意力には限界があるため、実際に契約書のドラフトや審査を行う際に、それらの知見に効率的にアプローチできる仕組みづくりは、契約業務の効率化や質の向上に大きな影響があると考えています。
自社の契約ノウハウを組織的に定着・活用させること、さらにルールや法律の変化に柔軟に対応できること、この2つを兼ね揃えた契約書レビューツールを探したときに、AIのマッチング精度や価格、自社の契約ノウハウをどれだけレビュー時に活用できるか、という点において、他のツールも検討はしましたが、AI契約書レビューにおいて老舗である GVA TECH さんの GVA assist がもっともバランスが良かったです。
そして、もし弊社ひな型に関するノウハウのブラッシュアップや法的な相談事項が生じれば、弊社がGVA法律事務所とも契約することで、シームレスに相談できる体制を有していること、また、審査対象の契約書データをベンダーが保存・二次利用しないといった強固なセキュリティ体制などが、導入の決め手となりました。
他にも、製品自体の良さとは別かもしれませんが、導入前の相談時点でのレスポンスの速さや課題の的確な理解といった担当者のスキルや、導入後も GVA assist を活用するためのフォローアップや契約に関する各種セミナーを通じた“法務担当者に寄り添う姿勢”も、GVA TECHの強みと感じております。
GVA assist を使ってみたご感想をお教えください。
当初、システムに明るくない法務部門の担当者も使いこなすことができるかな?という不安がありましたが、実際に触ってみると、直感的で分かりやすいUIのおかげで、問題なく使うことができました。加えて、搭載されているGVAプレイブックを企業法務に強いGVA法律事務所が監修しているとのことで、GVA TECHとGVA法律事務所の連携の強みを感じられ、安心感を抱きました。
新たなメンバーに GVA assist を用いた契約審査を始めてもらっていますが、GVA assist でまずレビューを行ってリスクを網羅的に可視化することで、リスクチェックの取りこぼしなどが減りました。それだけでなく、指導役のメンバーも気づいていなかったポイントを GVA assist で認識できたなど、いろいろな効果が出ており、コロナ禍において対面指導の機会が減っている現代にマッチしたサービスと感じています。
私自身もドラフトをする際に GVA assist を使いましたが、今までインターネット検索や多数の過去相談履歴を探していた時間が、劇的に短縮されました。
あと、弊社が多用な新規事業に取り組んでいくにつれ、法務としても新たな契約類型に関する知識やノウハウを積み上げていく必要があるのですが、GVA assist が搭載している契約書ひな型のバリエーションが多い点は魅力です。バリエーションの多さは新規事業におけるドラフトだけでなく、既存のひな型を最新状態にアップデートする際にも、業界標準契約書と容易に比較できたり、他の条文を流用したりできるので、便利に感じています。
GVA assist に対するご要望や改善点、ご意見などをぜひお聞かせください。
AIの精度は期待以上でしたが、さらなる精度向上に期待しています。また、自社プレイブックの管理において、例えば1つの条項を修正した際に、その条項を含む他のプレイブックにも横断的に反映されるようになると、ひな型の管理工数が劇的に楽になるので、実装に期待しています。
事例を読まれている方に向けて一言お願いいたします。
インターネットがない時代の法務担当者は、契約本を傍らに何冊もおいて審査をしていましたが、現在は書籍の代わりにAIを傍らにおいて審査する時代になりつつあります。
AI契約書レビューは一時期「法務担当者を駆逐する」かのようなことが言われていましたが、GVA assist は法務のスキルを拡張する技術だと捉えています。
契約書ひな型、締結済みの契約書、業界標準の契約モデル案、契約本、チェックリストなど、多岐にわたる契約のノウハウを人間が全て記憶して業務に活用するには、いつか必ず限界がきます。GVA assist に契約ノウハウを貯めていき、効率よく契約審査を行うことが、法務部門にとっての必須条件になっていくと思います。