ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社 菊地様・眞鍋様・松井様に、GVA assist の導入背景や目的をお伺いしました。
貴社の業務内容をお教えください。
スイスに本社をおくヘルスケア企業ロシュの診断薬事業部門の日本法人として、臨床検査用の検査薬・医療機器、および研究用試薬・機器の製造・販売を行っています。
“Doing now what patients need next” というグループの目的の下、患者さんや医療従事者にとって価値のあるイノベーションを提供するべく日々活動を行っています。例えば、昨年新型コロナウイルス感染症の拡大により広く一般の方にも知られるようになったPCR検査は、元々は1983年にアメリカのキャリー・マリス博士らによって考案された技術ですが、ロシュはいち早くPCR法の価値を見出し、90年代に全事業権を取得しました。そしてウイルス検査への応用を成功させ、20年以上にわたり適切な検査の提供に尽力しています。
現在の法務部門の体制や、ご対応されている業務をお教えください。
菊地様:
法務・コンプライアンス部門は、部門長を含めた3名体制で、全社の法務業務とコンプライアンス業務の両方を一手に担っています。
法務業務は、契約業務を中心に、各部門からの法務相談対応や会社法関係を、コンプライアンス業務は、医療業界ならではのルールやロシュグループとしてのルールの遵守徹底のための各部門への解決策提案型のアドバイス提供、環境整備、研修の企画・実施などを主な業務としています。3名で社内全12部門からの法務相談に対応しており、基本的に皆忙しくしている状況です。
弊社の法務・コンプライアンス部門の特長として、「私たちは各部門の戦略的ビジネスパートナーである」という考え方を重視しています。私たちが法務やコンプライアンスの知識を振りかざしてビジネスの是非を判断するようなことは決してせず、
- 各部門が実現したいことが何なのか
- その実現にあたってどのようなリスクがあるのか
- そのリスクが顕在化したらどのような損失があるのか
- 契約や運用でそのリスクはどこまでどのように回避できるのか
といったことを、法務の言葉ではなく各部門の言葉に置き換えて、「ビジネスを一緒に前進させる」スタンスで、社内にある12部門すべてと密接に協業しています。
そこまでビジネスに踏み込んで対応されていると、契約審査業務も大変なのではないでしょうか?
眞鍋様:
契約審査業務は、時期によって増減はありますが、年間およそ500件の契約を2名の法務担当で対応している状況です。法務部門としてレビューすることが多い契約類型は、臨床試験に関する契約や機器の賃貸借、保守や各種業務委受託に関連するものなどです。
各部門と相談しながら契約書を作りこんでいき、菊地が最終レビューをするという体制です。案件によっては菊地が最初から相談に関わることもあります。
この年間500件という数字には、自社ひな型で完結する契約書は含んでおりません。機器の賃貸借や保守など、自社ひな型で締結が完了する場合は現場で締結できるようにしており、全体的な業務効率化を図っています。
リーガルテックの導入を検討したきっかけは、具体的にどういったものでしたか?
菊地様:
前述のとおり、社内全部門の対応を3名体制で行っているので、現在の業務だけでも常にリソースはフル稼働している状況です。ただ、戦略的ビジネスパートナーとして、よりその価値を提供するためには各人がもっとビジネスの現場に入り込むことが必要で、そのためにもまずは現状の業務の省力化と効率化が急務と考えていました。
そうした背景を踏まえ、社内で新設されたAI・新事業グループの松井に「リーガルテックが盛り上がっているようだけれど、法務にマッチしそうなサービスはないか」と問い合わせてみたところ、いくつかのサービスの一つとして GVA assist のことを知りました。
GVA assist を導入するに至ったきっかけをお教えください。
菊地様:
リーガルテックの導入を検討開始したときは「契約書をAIに読ませたら最適解を出してくれるに違いない!」と期待していました(笑)。ですが、松井からAIについて解説してもらううちに、今のAIでできることをある程度きちんと理解できるようになりました。
そこで少々軌道を修正して、現状の業務の省力・効率化とともに、法務担当者間の業務品質の平準化と品質自体の向上を目的にリーガルテックの導入を本格的に検討することにしました。
というのも、眞鍋が前述したように、担当の部門をもち、その部門が関わる契約をすべて審査している関係で、どうしても各部門固有の知見が各個人に蓄積され、部門全体で共有することが容易ではないことなども相俟って、業務の品質に差が生じているという現状があります。
対応策として、担当部門の交代なども行ってはいますが、やはり抜本的な解決のためには、日々の業務で生じるナレッジの一つ一つを蓄積して共有し、それを利用しあうことが必要と考えました。
そのため、導入するサービスを検討するうえで重要視したのは、
- 弊社が取り扱う主要な契約書類型を網羅していること
- 自社基準のセットアップができること
- ナレッジシェアリングができること
です。
いくつかのサービスを見ていくなかでも GVA assist は、自分たちが扱う契約類型にも対応しており、かつ、自社のノウハウを蓄積し、共有することができる、言い換えると「ナレッジマネジメントも可能な契約レビュー支援」サービスである点が弊社のニーズと合致したため、GVA assist に決めました。
GVA assist を使ってみたご感想をお教えください。
菊地様:
導入してとにかく感じたことは、GVA assist はサポートが充実しています。一般的にこの手のサービスは導入したあとは「釣った魚に餌をやらない」ような状態になりがちという認識があったのですが(笑)、導入コンサルタントやカスタマーサクセスチームには想像以上に丁寧な対応をしていただき、「自社の契約審査基準」の整備に協力していただいています。
また、開発やサービス拡充のスピードが速いことも高評価です。使用感や機能についてGVA TECHにフィードバックすると、結構な確率で対応してくださるので、「GVA assist という製品を一緒に育てている」ような気持ちで普段使っています。
眞鍋様:
いまはまだ自社の契約審査に関するナレッジを GVA assist にセットしている段階なため、省力化や効率化を実感するのはもう少し先になるかなと考えています。ただ、これまで自分の記憶にとどまっていたナレッジを部門内で共有できることによって、例えば新人が契約審査業務に携わるようになったとしてもOJTの時間が短縮できたり、自力でもスピーディに立ち上がれるようになるでしょうし、現在の法務担当者が変わったとしても一定以上の品質の業務を継続して提供できるようになると思っています。
それらを考えると、将来的な業務効率化や平準化のインパクトはかなり大きなものになると、いまから期待しています。また、将来的には法務以外の部門でも契約書審査ができるようになる可能性も秘めていると考えています。
GVA assist に対するご要望や改善点、ご意見などをぜひお聞かせください。
眞鍋様:
是非PDFにも対応してほしいです。あと、表組みが含まれる契約書でAIがうまく動かないケースがたまにあるため、AIのさらなる精度向上に期待しています。また、将来的には、『契約書をAIに読ませたら最適解を出してくれる』、そんな魔法のようなこともできるAIになってくれることもまだ諦めていません。(笑)
※編集部注:2021年5月、Webブラウザ版リリースに伴い、テキストありのPDFに対応しました。
事例を読まれている方に向けて一言お願いいたします。
菊地様:
ツールを入れるだけでは業務効率は上がりません。きちんと使い、育てていくことで、はじめて成果がでると考えています。契約審査のナレッジマネジメントの基盤として、GVA assist には大きな将来性を感じています。
70%程度の業務削減を GVA assist を通じて実現し、創出した時間を使うことにより、これまで時間の制約上足を踏み入れられなかった業務で新たなバリューを出していくことで、『各部門の戦略的ビジネスパートナーとなる』というビジョンをより体現していきたいと考えています。
眞鍋様:
これからの時代の法務のあり方は、ただ書類をレビューしたり、法務知識を基にYes/Noを判断するだけではなく、ビジネスを前進させることを目的に積極的に活動していく必要があると常々考えています。そのためには、法務担当者の多くが日常の業務時間を割いている契約審査業務の効率化を実現する必要があり、GVA assist はそうした「未来志向の法務担当者」にとって必要なツールだと感じています。
松井様:
AIを導入し、ナレッジを蓄積するサイクルを回すには相当なコストと時間がかかると当初想像していましたが、GVA assist はローコストかつスピーディに導入することができました。これを社内事例として、他の業務でもAIや最新のサービスを活用したDXを推進できればと考えています。