GVA assistは、テクノロジーで契約業務に関する課題解決を目指すだけでなく、企業の法務パーソンの方々のお役に立てる情報発信を行っています。その一貫として、企業法務に携わる方々向けのセミナーも随時開催しています。
リーガルテックサービスが百花繚乱の様相を呈しています。さまざまなサービスが提供されている中で、自社に導入するとなると多くのハードルがあり、二の足を踏んでいる人もたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。
本セミナーでは、AI契約書レビュー支援クラウドのGVAassistと、契約ライフサイクル管理サービスのContactSを同時期に導入し、自社の業務効率化を成し遂げた当事者をゲストに招き、導入時の裏側や実際の効果について、赤裸々に語っています。
本まとめは前後編でセミナーをレポートいたします。
田坂 昌幸 様
原田産業株式会社
人事総務チーム マネージャー
2008年同志社大学法学部法律学科卒業。同年大手メーカー系列企業に営業職として入社。OA機器等のセールス業務を経験。その後、法務職への転職を目指し同社を退職。2010年8月に総合商社である原田産業株式会社に人事総務チーム配属として入社。
現職では法務のみならず、採用、貿易、会計、社内システム管理等の様々な業務を経験。現在は法務・コンプライアンス関連業務全般を担当している。GVA Assist・Contracts_CLMなどのリーガルテック社内導入を主導。
目次
リーガルテック導入前の状況
本セミナーでは、前半に、関西の総合商社である原田産業株式会社の人事総務マネージャー田坂昌幸さんをゲストにお招きし、企業のバックオフィスでリーガルテックのシステムをどのように導入したのか、についてお話いただきました。
後半は、ContactSを提供するContractS株式会社の津田奨悟氏とGVAassistを提供するGVA TECH株式会社の仲沢勇人弁護士、そして田坂さんの3人によるクロストークが行われました。
まずは田坂さんのリーガルテック導入時の体験談から見ていきましょう。
田坂さんが契約書レビュー業務を担当する前は前任者が一人で対応していたそうです。法務相談は問い合わせを受けたその前任者や田坂さんがその都度対応しており、相談のチャネルも電話、メール、席に来て相談と多岐にわたり、情報が分散していました。
3年ほど前から、その翌年に前任者が定年退職を迎えることに伴い、田坂さんが契約書レビュー業務を引き継ぐことになりました。当時、田坂さんは次のような課題を感じていたといいます。
「次のような旧態依然とした状況を改善したい」
- Excelの申請書を起票し、
- 申請書、契約書をデータで回覧し、
- その後はメールでコミュニケーションする
これらをリーガルテックのシステム導入することで、効率化を図りたいと考えたとのことです。
リーガルテックリサーチ時の苦労
システム導入にあたっては、課題を解決できるサービスのリサーチから始めています。
田坂さんのご経歴にシステム管理の業務経験もあったため、付き合いのあるベンダーからまずは情報収集したそうです。
汎用のワークフローシステムの紹介も受けましたそうですが、いまいちしっくりこなかったとのこと。その理由について原田さんは「汎用のシステムは基本的に一方向。申請者から上がっていって承認者に順番に上がっていく。しかし、契約書レビュー業務は双方向のコミュニケーションが必ず必要になる。リーガルに特化したサービスが無いかをもう少し調べた」と語っています。
リーガルに特化したサービスのリサーチの際には、
- 展示会
- セミナー
- Web検索
などで情報収集したとのこと。ちょうどそのころ「リーガルテック」という言葉が出始めた頃で、ワークフローシステム以外にもたくさんのサービスがあることを知ったそうです。情報収集後、対応業務領域も多種多様で、数あるなかでどれを導入するのが自社にとってベストかを再検討しています。
課題と対象業務を再検討する
そもそも、原田産業の法務業務の課題は何なのか。田坂さんは
- コミュニケーションツールがバラバラ(メール、電話、口頭)
- 人に仕事が付いている。担当者の頭の中にしか論点や基準がなく、会社としてナレッジが蓄積されない
- 本来すべきことができていない。たとえば契約書の有効期限の管理など
- そもそもExcelで起票したあとに最後は紙に印刷して判子をついて回す。紙の管理から脱却したい
と整理されました。その上で、
- 契約書レビュー業務
- 契約書管理業務
- 法律相談業務
- 契約書の締結業務
これらをカバーするツールを検討しようと考え、サービスを絞っていきました。
AI契約レビュー支援サービスを選定したときに田坂さんはどのようなことを考えていたのか。そもそもAI契約レビュー支援サービスで何ができるのか、という点では、
- チェックポイントの見落としを軽減できる
- 表記ゆれ等の細かい確認作業の手間も減らせる
- 契約書のひな柄をシステム上からダウンロードできる
が価値があると理解され、これらの機能は個人の生産性の向上につながるのではないかと考えたそうです。
加えて、ツールに自社基準の登録もできる点を重視されました。総合商社である原田産業は営業部署だけで13チームあり、それぞれがまったく業界が異なり、取り扱い商材もバラバラ。レビューのポイントがその内容によって多種多様でした。それらのナレッジは担当者個人に蓄積しており、前任者から引き継ぐにしても限界がありました。
AI契約レビュー支援サービスを使えば、ナレッジの共有もできると考えたのが導入のきっかけだったそうです。「導入することで、組織の継続的な成長に貢献できると思った」と田坂さんは語っています。
次に、ワークフローシステム選定時に田坂さんがなにを考えていたのか。
- そもそも既存業務から置き換えるところで、全社を巻き込むことになるので、スムーズに進めることができるのか?
導入にあたっていちばん大切なところで、インターフェイスなどのユーザビリティが稚拙では導入しても使ってもらえないと考えたそうです。承認フロー設計の自由度も重要なポイントで、現状の原田産業の承認フローにうまく乗せることができるのか、という視点からも検討をしたと語っています。
ほかにも、
- ナレッジの蓄積、活用ができるか?
- 電子契約に対応しているか?
- 契約書を電子化し管理できるか?
- その他付随してなにができるのか?
なども、導入にあたって検討したそうです。
GVA assist 導入時になにを考えていたのか
では、最終的にどのように決めたのでしょうか。
システム導入にあたってなるべく無駄は作りたくない
レビューはこのシステム、契約書の管理は別システム、相談の管理はまた別のシステムと、多くのシステムを導入すると現場が混乱する。
メインの機能が違っても、付随する機能が重複するサービスを検討
AI契約書レビューにも多くの機能がついている。付随している機能は導入を決めているワークフローシステムにも付いており、両社を入れると機能がバッティングしてしまう。そのことで現場が混乱するのを避けたいし、重複している分コストも余計に掛かる可能性があった。
ナレッジを蓄積・活用できる仕組みを作りたい
長期的に組織運営をしていく上で、どうやってナレッジを蓄積活用できるのかを意識した。
法務業務は人に業務が付いてしまいがちなので、担当が変わっても誰が担当しても一定のクオリティを保てるような組織になることが長期的には強いと考えた。
こういったことを勘案し、GVA assist の導入を決めたそうです。
実際に社内でどのように稟議を上げたのか?
講義では、田坂さんが実際に上長や役員にプレゼンした際の稟議書も、参考資料として公開されました。
プレゼンの際には、まず「現状の法務業務の課題」を挙げています。
リーガルテックを導入することでこの課題をどう改善するのかプレゼンし、次にどういったシステムを検討しているのかを説明しています。その次に、契約書のAI契約書レビューの検討をする際に、このシステムで何ができるのか、どういう効果を得られるのかをプレゼンしています。
導入の際にはいきなり本採用するのではなく、まずはトライアル期間を設けてから本採用の流れも提案しています。単にトライアルをするだけではなく、イニシャルとランニングがどれだけ掛かるのかをチェックすることもポイントとして入れています。当時から GVA assist を第一候補として検討していたそうです。
続いて法務相談フローシステムの検討。こちらも流れはほぼ同様です。
スケジュールについても説明しています。実際に当初の予定通りには進まなかったそうですが、「役員を納得させるには、どんなスケジュールで進めていくのかを初期段階で提示するのが大事」と田坂さんは語っています。
これらの社内プレゼンの結果、AI契約書レビューシステムは GVA assist を、契約ライフサイクル管理はContactS CLMを原田産業で導入することになりました。
導入のハードルをどのように超えたか
導入にあたってはさまざまなハードルがありました。これらをどのように乗り越えたのでしょうか。
1.契約書、特にセキュリティに対する不安
会社としても重要な資料になるので、セキュリティに関しては過敏に反応します。各社の資料を比較検討して、この会社はここのような体制を構築しているから安全だと関係部門へ説明したとのこと。
2.多種多様なビジネスを展開する中で、対応しないといけない法律が増えてきており、法務業務が逼迫
法務業務が逼迫すると事業部への影響も出てくる、という事情をクリアする必要がありました。
3.コスト面においてはなるべくムダの少ないシステムを意識
どうすればコストを抑えられるのか、徹底的に考え抜いて会社を説得したそうです。
4.会社全体でDX推進の機運が高まっていた
生産性向上、DX推進の時機を捉えたのは大きいとも語っています。
まとめとして、システム導入にあたっては、
- まず自社の課題を洗い出す
- 改善したい業務をピックアップ
- システム導入によりどのような業務がどう改善されるのかを明確にする
- 費用的に無駄のないシステム選びを心がける
- 法務だけではなく会社全体の競争力向上に貢献するものであることを説明する
が大切だと語り、第1部は終わりました。