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戦略法務とは?予防法務や臨床法務との違いから具体例、必要なスキルを解説

企業法務に携わる方で「戦略法務」という単語を目にしたことのある方は多いのではないでしょうか?

概念としては以前から存在していたキーワードですが、この数年、法務におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)とセットで用いられることが増えてきました。

デジタル活用を前提とした業務変革により、効率化はもちろん、属人化の解消、再現性の向上といった効果が得られます。戦略法務を実現する上ではこれらが実現できていることが必要になるため、法務のDXと戦略法務という考え方とは相性が良い、というのが理由の一つですが、テクノロジーの進歩、スタートアップ企業や新規事業を通じた未知のビジネス領域の開拓、さらに新型コロナウイルスの影響もあり、複雑で予想の難しいビジネス環境において、戦略法務という機能のニーズが高まっていることも無視できません。

本記事では、「戦略法務」というキーワードについて、従来からあった「予防法務」「臨床法務」との違いや具体例、企業において実現するために必要な要素を紹介します。戦略法務とは何かを知り、どう向き合えばいいのか、実現するためには何が必要なのかについて、参考にしていただければ幸いです。

戦略法務とは?

「戦略法務」という言葉をここでは、「法律知識やスキルを経営戦略に反映し、効率化や利益向上を実現すること」または「経営問題と密接に関わる法務問題について、経営戦略として良い打ち手を実現するために法務問題を検討・構築・処理し、法務リスクのみの観点から離れて最適解を目指す試み」と定義します。

いずれにしろ、企業の主たる目的の一つである株主価値の向上に法務面でどんなアプローチができるかがカギになります。もちろん「戦略法務」という言葉自体に厳密な定義があるわけではありません。法務部門が企業の経営レベルの意思決定に関わったり、法務スキルを使って企業価値最大化に貢献する活動を総称したものといえます。

市場がグローバル化し、海外進出はもちろん、海外から今まで想定していなかった競合企業が登場するなど、ビジネス環境は複雑化しています。競争環境が激化するなか新たなチャレンジは必須となり、比例してリスク発生の可能性も増しています。

こんな時代に経営がリスクを取って挑戦するためのサポートが今まで以上に必要になっており、その担い手として法務の持つスキル、知見が注目されています。

リスクをチェックしたり対応することはもちろん必要ですが、経営に先回りしてリスクを探り対策を講じること法務部門以外の部署でもリスク対応ができるように整備すること良い経営判断を後押しすることなど、戦略法務において行われることはさまざまです。

これまでも戦略法務に該当する活動は、特にグローバル化の進んでいる企業内では進んでいましたが、他の法務と区別することで、その影響や実現のために必要なことの把握がしやすくなりつつあります。

予防法務や臨床法務との違い

戦略法務とセットで語られるのが「予防法務」「臨床法務」といったキーワードです。従来の法務ではこの2つが主な役割ということもありました。それぞれの概要は紹介します。

予防法務とは?

予防法務とは、企業法務の業務の中でも大半を占めるもので、企業が法的な紛争が生じることを避けたり、紛争発生時の悪影響を減らすために、予防的に行う取り組みを指します。

具体的な例としては以下があります。

  • コンプライアンス遵守状況のチェック
  • 契約書の作成、レビュー、交渉、締結、管理
  • 損害賠償など、契約において発生するリスクの特定や対処方法の検討
  • 株主総会対策
  • 社内規定整備
  • 労働問題や労務管理
  • 知的財産管理
  • 情報漏えい対策
  • 許認可や業法、業界の規制対策

紛争になってしまうと大きなリソースが必要になります。できるだけ紛争は回避する、もしくは紛争になってもできるだけ自社に有利な状態にしておくことが重要です。こういった観点から、予防法務は企業法務の根幹をなす業務といえます。

臨床法務とは?

臨床法務とは、倒産処理や訴訟対応、クレーム対応など、発生したトラブルを直接解決する法務を指します。実際に起きてしまったことに対応するという性質から、予防法務に対して臨床法務と呼ばれています。

臨床法務は、紛争法務、紛争処理などと呼ばれる場合もあります。具体的な例としては以下があります。

  • 損害賠償の請求~和解交渉
  • 訴訟への対応
  • 債権回収や財産の保全(仮処分や仮差押えなど)
  • クレームやトラブルの対応
  • 社員や役員の不祥事への対応

一般的にイメージされる法務の業務内容としては、予防法務や臨床法務のほうがわかりやすいという方もいらっしゃるかもしれません。


このように、問題発生を事前に防いだり、実際に問題が起きたときに法律のエキスパートとして処理に当たるのが従来の法務のイメージだったといえます。

戦略法務の具体例

予防法務や臨床法務など、従来からある法務に比較すると、戦略法務は抽象的に議論されがちですが、だからこそ先行きが見通しづらい今、注目されています。

イメージしやすくするために、戦略法務が企業で活用される具体的なシーンをピックアップして紹介します。

新規取引・新規事業におけるリスク検討・実現手段の考案

新規の取引先や新規事業の対象となる業界に関わる法的リスクのチェックや対策のほか、既存の法規制とのバッティングにより実現困難と思われるビジネスについて、実現可能な手段を検討・考案することも、戦略法務の業務に含まれます。

内容は予防法務に近いですが、現在の事業環境や経営戦略から先回りして動くことで迅速な意思決定をサポートできるため、戦略法務的な性格が強くなります。また、競合や顧客はもちろん、行政との関係づくりや働きかけが必要となる場合もあります。最近では、規制のサンドボックス制度等の活用により、法規制との衝突でこれまで「市場がない」と思われていた領域にビジネスチャンスを見出す例も見受けられるようになっています。

さらに進化すると、いざというときに素早い意思決定ができる仕組みづくりが求められることもあります。

知的財産の戦略的な活用

防衛的な知財管理や、他社の侵害に当たらないための予防的な取り組みだけでなく、知的財産の価値を適正に評価し、活用することで企業価値を上げる取り組みです。

ライセンス供与から利益を得たり、知財を活用してパートナー企業をネットワーク化するなどが考えられます。当然、自社の知的財産を権利化することも含み、どの範囲でどういった権利をとるか一つとっても、企業の経営戦略との兼ね合いで検討すべき問題といえます。

海外展開のサポート

展開する現地の法令調査、進出先国内での競合状況、紛争や訴訟リスクなど考慮し、進出に適した地域や進出児に必要な手続きを検討する取り組みです。特に労務問題や外資規制は海外進出においてリスクになりやすいポイントで、高度な専門性やノウハウが要求されます。

M&Aのサポート

通常の買収・売却だけでなく企業再編や事業承継なども対象になります。買収スキームの策定・決定にはじまり、デューデリジェンス(買収対象企業の財務や事業の実態、法的問題の調査)や各種契約書(秘密保持契約書や基本合意書、株式譲渡契約など)の作成、コーポレート手続きの履践、買収後の自社への法的な影響の有無チェックなど幅広い領域が対象になります。

事業の海外展開だけでなく、クロスボーダーのM&Aも当たり前になりつつある中、法務への期待が高まっているスキルです。


上記4つの取り組みのそれぞれは、以前から企業内で行われていました。細分化すると予防法務の集合であったりする場合もあり、全てが新しい概念ではありませんが、経営の観点から複合化することで、今までの法務とは違った視点が必要になったり、新しいノウハウとして体系化されつつあるのが戦略法務の特徴です。

戦略法務実現のために持っておきたい3つの組織スキル

このように「戦略法務」自体に明確な線引きはありません。予防法務や臨床法務に比較しても必要なリソースの把握は難しくなります。ただ、一つだけいえるのはこれからのビジネス環境では戦略法務的な機能の重要性は高まるということです。

戦略法務を実現するうえで何が必要なのでしょうか?大前提として、経営が法務部門に戦略法務としての役割を期待していること、それを前提とした評価などの制度が必要ですが、ソフト的な視点では以下の3つが考えられます。

契約関連業務における属人化の解消、業務標準化ができている

法務の業務、なかでも定型的な契約業務が標準化され、人によってクオリティやスピードに大きな差がない状態になっているか、ということです。

法務部門の業務で大半を占めるのが契約書作成やレビュー業務です。特定の人でないと対応できなかったり、対応する人によって成果にバラつきがある状態を改善することで、戦略法務への下地ができます。

業務が標準化できていることで、定量化して改善したり、精度の高い人事評価ができるようになります。大半を占める定型業務を高い精度でコントロールできれば、戦略法務で必要となる”非定形で難易度の高い契約業務”にリソースを活かせるようになります。

事業部門との連携、信頼関係ができている

事業部門とハブ的な役割となる法務メンバーがいるかどうか、事業部サイドからの依頼や相談を受け付けるための業務フローが構築できているか、これらがあることで予防法務がスムーズにできる状態となります。

相手の部署があってのことなので、短期的な実現は難しく、平時からの準備や信頼関係の構築が重要ですが、この信頼関係こそが戦略法務の実現において重要な要素となります。

DX視点での業務の設計、プロセスの見直しができている

新型コロナウイルス感染拡大を背景に、目にすることが増えたのが「DX」というキーワードです。デジタル技術を活用したビジネス変革」を示す言葉ですが、法務においては、今まで使っていたソフトウェアやコミュニケーションツールはもちろん、テレワークやリモート会議、リーガルテック活用を前提とし、ゼロから業務を設計するということになります。

法務分野でも、電子契約やAIによる契約レビュー支援などリーガルテック領域のサービスが増えています。法務部門内で完結する業務を皮切りにこれらの活用が前提になってくるでしょう。

短期的なメリットとしては効率化が中心ですが、デジタル活用による定量化や可視化、場所やスペースを問わないといった特性は戦略法務実現のためのリソースの確保において必須になります。

おわりに

「戦略法務」という言葉の紹介から具体例、企業がこれを実現するために必要な要素を紹介しました。3つの必要な要素を総合すると「予防法務が高いレベルで実現できている」ことともいえます。

戦略法務は明確な定義がなく、企業が置かれる環境や戦略によっても何をすべきかが異なります。短期間での実現は難しいでしょう。

その反面、従来からある予防法務はノウハウが確立されています。まず予防法務が高いレベルで実現でき、経営陣や事業部門との信頼関係ができていることが戦略法務の実現にとって重要になります。

残念ながら「これさえあれば戦略法務」という近道はありませんが、本記事で紹介した要素が、会社や事業における理想の法務機能を描き続けるうえで参考になれば幸いです。

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